Archive for the ‘財産管理・成年後見’ Category

夫婦での後見

2021-12-15

ご夫婦での成年後見を検討されるケースが増えています。

これまでの成年後見でよくあるパターンとしては、高齢のご夫婦で元気な方が家計を管理しており、死別等によって家計管理をする人がいなくなった場合に利用されることが多かったです。

ただ、ご夫婦間での年齢差はそれほど大きくないことも多く、家計の管理にも大きな負担がかかっていることがあります。

老人ホーム等の施設に入所し、普段の支出は通帳での引落しのみという方であれば負担は比較的小さいですが、在宅で生活している方はこうはいきません。

各種税金の納付、補助金の申請、生活費の支払い。やはり色々な金融機関や役所に何度も足を運ぶことになります。

この場合、早めにご夫婦もしくは財産所有者に成年後見を導入することを検討しましょう。

これは私が後見の制度説明でよく言うことなのですが、「成年後見を導入しても報酬は裁判所が決めるので、生活レベルが下がるような制度ではありません。」

つまり、成年後見を導入したからといってこれまで以上に生活費を節約しないといけない、自由にお金を使うことができなくなることはありません。(支出に無理がある場合の改善はもちろんあり得ますが)

あくまで成年後見制度は。本人のお金を本人のために使うサポートをするものです。

夫婦での成年後見導入は、より柔軟に金銭管理を行うことが可能です。

成年後見では、申立て時・就任時に収支を報告します。

この時に旦那さんのお金を家計として奥様に渡したり、夫婦で施設入所できる施設を選定することが出来たりと片方だけの後見に比べてできることが増えます。

2人の財産を管理するために将来的な財産管理プランも作成しやすいので、より安全に確実に生活を保証することができるのです。

それ以外にもやはり、最初に挙げたような入出金の管理がなくなるだけでもご負担は劇的に軽減されます。

もしご親族の方やご近所の方で金銭管理・生活で困っている方がおられたらお気軽にご連絡ください。

必ず司法書士が面談し、制度の説明を行います。

もう一つの後見

2021-12-06

成年後見任意後見。これらは認知症や精神上の障害により財産管理にサポートが必要となった方をサポートしていく制度です。

この制度は、認知症や精神上の障害を持つ方を対象とする制度のため、必然的に高齢者の方をサポートすることが非常に多いです。

ただ、財産管理が必要な方は高齢者に限らず、例えば未成年の方にも財産管理が必要となることがあります。

例えば、未成年者に親権者がいなくなってしまった時。具体的にはご両親が亡くなってしまったケース。

他には、親権者は存命であるが、虐待等が理由で親権を行使することができなくなった場合。

このような時に親権者以外の親族が近くに居ればサポートを受けられるかもしれません。

しかし親族の協力も得られないとなると、未成年者の財産は非常に危ういものになってしまいます。

そんな時に登場する第三の後見と言うべき制度が「未成年後見」の制度です。

この未成年後見制度は成年後見と同じく家庭裁判所により選任するのが通常の形となります。

但し、未成年後見には遺言により指定する方法もあり、これは成年後見との大きな違いになりますね。

親権者が病気などにより近い将来親権を行使できなくなることが確定的である場合、遺言書で指定することにより親権者が信頼している人に未成年後見人に就任してもらうことが可能になるのです。

単に財産管理・身上監護をするだけの成年後見と比べ、準親権者というべき権利を持つ未成年後見人を親権者が選ぶことができるのはある意味当然かもしれません。

 

さて、この未成年後見制度。

任意後見と比べてもさらに認知されていないように思います。

私たち司法書士の世界でも、成年後見・任意後見に関する研修は割と充実しているのですが未成年後見となると研修の数も少ないです。

さらに、申立ての方法・どのような時に利用すればいいのかを知識で持っていたとしても、児童福祉関係者との繋がりが薄く、利用する機会が少ないのも現状です。

かくいう私も知識としては未成年後見について知っていますが、実際申し立てたことも就任したこともまだありません。

ただ、虐待等に対する対応に世間の関心が高まっている現在、この分野についても専門家である司法書士は力を発揮しなければなりません。

これから力を入れていくためにも、ホームページで少しづつ情報を提供していこうと思います。

成年後見とあんしんしこやかセンター

2021-11-29

司法書士成年後見業務を依頼される場合、その経路は様々です。

個人の方、つまりは親族やお知り合いに認知症で困っている方がいる場合に依頼をお受けすることもありますが、ごくごく少数と言っていいでしょう。

ではどこからのご紹介が多いのかと言うと、病院関係者さん、高齢者施設の方、この辺りの業種の方が多いです。

流れとしては、以下のような感じです。(在宅のケアマネージャーさんからの場合)

・担当の被支援者が認知症を発症。

・金銭管理に問題が発生或いは施設入所等の契約が必要。

・近くに親族がいない、協力してくれない。

このような状況が起こると成年後見制度の利用を検討するようです。

そしていざ後見開始をしようとする場合、私の事務所をはじめ、多くの事務所では後見の診断書を最初に取得していただくことになります。

この後見の診断書とは何かというと、被支援者の認知症・精神上の障害の度合いを医療関係者が診断したものです。

書式は裁判所のホームページに備え付けられているもので、一般的な診断書とは異なります。

この診断書にはどのようなことが書かれているかと言うと、まず大きな要素としては、被支援者が補助・保佐・後見のどの状態であるかが書かれています。

その他にはいくつかの認知力診断テストの結果が書かれていたり、認知症に至った原因の病名なども書かれていることがあります。

この診断書をもって私たち司法書士は、裁判所提出書類を作成するのです。

そしてこの裁判所提出書類作成の前に契約書を交わして、戸籍を収集して、親族に手紙を出して・・・と手続きが進んでいきます。

さて、このようにケアマネージャーさん等から依頼が来ることが多いのですが、最近はあんしんすこやかセンターや民生委員であったりという地域支援の関係者さんからのご依頼も増えています。

やはりこの後見制度、施設に既に入所している方よりも在宅で支援を受けている方の方がニーズが大きいのです。

通帳や現金の紛失、不用品の購入、近隣住民とのトラブル、在宅の方が抱え得る問題は挙げればきりがないのです。

そこで当事務所でも、こういった地域支援の方々との協力を拡げていくこととしました。

もし神戸市明石市辺りで民生委員などをやっておられる方で後見について知りたい、説明会をしてほしいという方がおられましたらお気軽にご連絡ください。

完全無料で相談会等に伺います。

任意後見のタイミング

2021-11-03

任意後見についてのご相談は少しずつ増えています。

その中でよくある質問はやはり、任意後見契約をどのタイミングで締結するのがいいのか。ということです。

これは非常に難しい問題です。

1番シンプルな答えとして、病気や事故でいつ認知能力が失われるか分からない以上は、すぐに締結するべきだ。という考え方も確かに存在します。

これは任意後見を確実に実現させるという意味では正解だと言えます。

ただ、任意後見契約の締結が早すぎるとデメリットも存在するのです。

デメリットが現れる場面として考えられるのは、財産状況が将来大きく変わることが予想される方です。

例えば、資産家の両親がおり、その相続次第によって財産状況が大きく変動する場合がこれにあたります。

相続財産が預貯金だけであれば、当初から相続した後のことも踏まえて任意後見契約をすることもできますが、不動産などがあればどうでしょう。

さらに相続人が複数おり、その不動産を承継するかどうかすら定かではないという状況であればさらに任意後見の契約内容を決めることが困難となります。

いや、困難というよりは、事後に大きな変更が必要という方が適切かもしれません。

そして、契約の変更にはその時点での認知能力が必要です。

つまり、相続するかどうかが確定した後で認知能力が残っていないと適切な任意後見契約が締結できないのです。

こうなると、最初に挙げた前提としての、「すぐに契約を締結するのがベスト」というのが当てはまらないのです。

むしろ中途半端な任意後見契約がある手前、法定後見への移行が遅れることもありあるのです。

このように、任意後見締結のタイミングはその人によって大きくことなります。

考慮する要素としては、年齢・家庭状況・資産状況・相続状況等々様々です。

しかし、締結のタイミングはバラバラでも、司法書士の相談タイミングはベストなものがあります。

それは、今日この日です。

できる限り早く司法書士へ相談し、ベストなタイミングでの任意後見契約を目指しましょう。

ぜひ任意後見、相続対策について気になるという方はお気軽にご連絡ください。

成年後見におけるリスク

2021-11-01

認知症になったら成年後見制度が必要である。

このことについては、病院や高齢者施設の関係者さん等を中心にかなりの認知度になってきたように思います。

ただ、この成年後見制度には大きなリスクも存在します。

そのリスクとは、成年後見人になる人を選ぶことができないという点です。

「え?私の親族は知り合いの司法書士になってもらったけど・・?」と思われた方もおられるかもしれませんが、それは結果知り合いの司法書士になっただけなのです。

というのは、成年後見人を選任するのは司法書士や本人ではなく家庭裁判所であるからです。

司法書士が成年後見の申立に関与し、申立書を作成したとしても申立て時にできることは「候補者を挙げる」ことだけなのです。

裁判所は候補者リストに縛られずに、例えば司法書士団体であったり弁護士団体など他の組織に候補者を挙げることを求めることができるのです。

実際のところは、司法書士や弁護士が候補者に挙がっていれば高確率でその人が選任されるので、「知り合いの司法書士になってもらった」というのもあながち間違いではありません。

ただ、この候補者しか選べない状況のリスクになり得るのは、「候補者が親族などの一般の方」である場合なのです。

前述のように裁判所は、申立て時の候補者に縛られずに後見人を選任します。

例えば、高額の財産を抱えている方が認知症になった場合で、その親族が候補者になり申立てをしたとしましょう。

高額の財産を管理する場合、後見人の事務が増加します。

扱う金融機関の数も増加するのが一般的ですし、有価証券・不動産など色々な形の財産を所有していることもよくあります。

このような状況で専門的知識のない親族が財産管理を一人で行うことは、危険だと裁判所はよく判断をするのです。

そうなれば私のような司法書士が選任されることになったり、司法書士が監督人として追加で選任されたりするのです。

これはある意味当然なのですが、親族側にすれば、専門家へ支払う報酬が発生してしまうため、リスクになり得るのです。

実際に、自分が選任されると思っていた親族と実際に選任された司法書士の間に軋轢が生まれるケースも少なくはないのです。

では、この選任時のリスクをどのように回避すればいいのか。

現状は、「認知症の前に」する対策しかありません。

少し親族の将来に不安が出てきた、でも財産管理や身上の世話は私が引き続き行いたい。という方は一日でも早く「任意後見」の導入をご検討ください。

任意後見であれば、認知症になる前に自分の財産を将来管理してくれる人を選ぶことができます。

もし制度の説明を聞きたいという方はお気軽にご連絡ください。

後見終了後・・・

2021-10-04

司法書士は、全士業の中で一番成年後見を受任しています。

ここ神戸でも、家庭裁判所から多くの司法書士が選任を受けています。

成年後見を多く受任しているということは、被後見人の死とも多く関わってきたということが言えるでしょう。

成年後見とは、被後見人の財産管理を選任されてから死亡(或いは認知症が治るまで)まで続けることになります。

それは、成年後見人が被後見人の代理人であるからです。

代理とは、代理される本人が生きている間しか代理権を持つことができません。

つまり、本人が死亡すると当然に代理権を失うのが成年後見人なのです。

しかしながら、本人が死亡するとそれに付随する事務であったり財産を承継する必要が出てきます。

にもかかわらず、成年後見人には代理権がありません。

となるとこれらの事務は誰がどのように処理していくのでしょうか。

その答えは、基本的には「相続人」となります。

相続人は亡くなった本人の権利義務を全て承継するため付随義務も当然相続人が処理していくことになります。

ただ、成年後見を利用している方は、相続人がいなかったりあるいは関係性が薄いという状況であることも多く、相続人の協力が得られるとは限りません。

相続人がいないと、死後の緊急の事務を行う権限のある人がいなくなってしまうのです。

こんな時のために成年後見人には、緊急の対応権限が発生する場合があります。

法的根拠となるのは、「事務管理」と「応急処分義務」です。

まずは、民法697条の事務管理。

 義務無く他人のために事務の管理を始めた者は、その事務の性質に伴い、最も本人の利益に適合する方法によってその事務の管理をしなければならない。

というものです。抽象的な権限ですが、「他人のために」「権限無く」事務が開始されうることを想定した条文となっており、本人が亡くなった後のやむ負えない事務はこれが根拠となります。

ただやはり、抽象的な表現であるため、どこまでしてもよいのかということがあいまいになってしまいます。

そうなると後見人をしていた司法書士を始めとする専門家は、「できる限り何もしないこと」を選択してしまいます。

そこで、もう一つの根拠となる応急処分義務では、

 ・相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為

 ・相続財産に属する債務の弁済

 ・その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(この項目については家庭裁判所の許可が必要)

この書きぶりであれば、最低限どこまでやっていいのかが分かりやすくなります。

司法書士は、相続人がいない本人が亡くなった場合、これらの規定に従い事務を処理していくのです。

ただ、やはりそれでも相続人の協力がなければ私たちができることはあくまで最低限の部分に過ぎません。

ではどうすればいいのか。

現状は、認知症になる前に、「死後事務等委任契約」を結ぶ他ありません。

自分が死んだ後、周囲に迷惑を掛けたくない、死んだ後のことまで自分で決めたいという方は是非お元気なうちに司法書士へ相談しましょう。

当事務所でも、任意後見・死後事務委任を含めた複数の制度を利用し、理想的な終活をご提案しています。

気になった方は是非無料相談をご利用ください。

任意後見と法定後見の併用?

2021-09-29

私は現在、法定後見の案件を多く手掛けております。

法定後見とは、認知症や精神上の障害により判断能力が少なくとも不十分な方のサポートを行う人を家庭裁判所が選任する制度のことです。

この法定後見制度には当然大きなメリットがあります。

認知症の方が契約が締結できなかったり、金銭管理ができない場合にそれらを補うことができます。

これにより、金銭の紛失や使途不明金の減少、施設の入所契約がスムーズにできるため本人さんにとってはメリットが多くあります。

ただやはり、融通の利かない所があります。

それを補うために任意後見があるのですが、実はこの任意後見と法定後見は同時併用ができません。

理由としては、任意後見人と法定後見人が行うことが被ってしまうためです。

ではどちらも使わなければならない時、例えば「任意後見を発動していたが、予期しない事由が起こり、任意後見だけではサポートしきれなくなった」場合はどうなるか。

この場合、任意後見を終了して法定後見へ移行する他ありません。

しかし、本人の最後の意思表現となり得る任意後見が簡単に終了してしまっては制度の意味がありません。

そこで裁判所の運用としては、任意後見契約を締結している場合には「本人の利益のため特に必要があるときに限り後見等の審判を行うことができる」としており、出来る限り任意後見を優先する運用を行っています。

この運用は、「任意後見は基本的には、終了せざるを得ない状況が発生しないように」考えなければなりません。

そうです、法定後見人を選ぶ(最終的には裁判所が選任しますが)時よりも任意後見人を選ぶ方が慎重にならなければなりません。

法定後見への移行はあくまで最終手段です。

ただ、逆に言うと「任意後見契約をしたから、どんな不都合が起こっても一生任意後見に従うしかない」ということもないのです。

聞き取り内容、財産の全容、家族構成、相続人間の関係性等々、契約締結時にできる限りの要素を勘案し任意後見契約書を作成しております。

それでも不測の事態というのは発生し得るものです。

事故であったり、天災、家族構成の変更等々、これらはどんなに対策してもあり得るのです。

そんな時に任意後見契約内容を変更できる段階であればそうすればいいですし、既に認知症状態であれば法定後見への移行も可能です。

いずれにせよ、現段階でのベストな対策をするのが任意後見の役割です。

将来の絵を描ける司法書士に相談し、将来の不安を少しでもなくしましょう。

相続してからか、成年後見か。

2021-09-27

司法書士として、相続登記の案件であったり成年後見の依頼というのは日常的に入ってきます。

ただ、司法書士事務所を訪れる方の中には「解決したい課題」はあるものの「どの制度を使えばよいか」ということまでは分からないという方も多くおられます。

他にも「この制度を使ってほしい」という依頼で事務所を訪れても、話を聞いた結果別の制度を使うこともあります。

ただ、私たち司法書士でも「絶対にこの制度が良い」と言い切れないようなケースも多くあるのです。

例えば、「年老いた両親の不動産を処分したい」というケース。

ご両親がまだ自宅に住んでいる場合だと「亡くなった後」処分するのが良いかと思いますが、司法書士事務所に相談に来る以上そうではありません。

「両親は既に施設あるいは病院に入っており、帰ってこられる可能性が低い」というケースがほとんどです。

この場合、まず検討するのは本人である「ご両親の意思」です。

ご両親の認知能力が低下しておらず、ご両親がすぐにでも不動産を処分したいと考えていると、取り得る選択肢は一つです。

シンプルに不動産屋さんへお繋ぎし、処分を進めることになります。

反対に、処分したくないということであれば、亡くなるまで不動産には手を付けないということになります。

しかし、ご両親の意思が分からない或いは不十分な場合はそうはいきません。

すぐに処分した方が良いのかはまさにケースバイケースということになります。

そして、認知能力が不十分な状態で処分を進められる現状唯一の方法が「成年後見人の選任」です。

家庭裁判所へ成年後見の選任申立てを行い、就任した成年後見人により不動産を処分します。

ただこれは100パーセント可能な方法とは言えません。

不確定要素とデメリットがあります。

まずは、不確定な要素から。

・成年後見人はあくまで家庭裁判所が選任するため、最終的には誰が選ばれるか分からない。

・成年後見人が就任しても、本人のために行動しなければならないため確実に不動産を処分するかが分からない。

・居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が必要であり、許可が出る状況かが分からない。

こういったところが不確定要素となります。

デメリットとしては、

・費用がかかる。

・基本的には本人が亡くなるまで後見が続く。

この辺りが挙げられます。

つまり、両親がご健在の間に不動産を処分するには、こういった障壁を勘案して手続きを選択する必要があるのです。

そのため、こういったご相談が当事務所にあった場合は「複数の選択肢」をご提供させていただいております。

各手続きのメリットデメリットもお伝えしますので、その中で「あなたにとって」ベストな選択肢を考えていただくということを意識しています。

「自分の状況でどんな選択肢、可能性があるのか知りたい」という方は是非ご連絡ください。

選択肢の提案、相談だけで依頼に至らない場合は費用を一切いただきません。

どうぞお気軽に無料相談をご利用ください。

認知症保険と司法書士

2021-09-17

認知症。医療の進歩による平均寿命が長くなったことにより、多くの方が認知症になってから亡くなるという流れになっています。

ご自身が認知症になることに漠然とした不安を抱えておられる方は多くいるでしょう。

ただ、認知症になった時、何が不安なのでしょうか。

親族に迷惑をかけること?

施設への入所契約? 

自宅の処分?

金銭面での不安?

色々あるでしょう。

しかし、具体的にこれが不安だという要素が分からないという人もおられるのではないでしょうか?

そうなんです。

認知症になるとすぐに問題が起こることはないのです。

認知症になった後、自宅の処分が必要になったり、銀行口座が凍結したりして始めて困るのです。

認知症は、他の問題と複合して初めて課題となり得るのです。

逆に言うと、司法書士などの専門家や生命保険などで、認知症単独の対策を行うことなど本来ないのです。

司法書士や保険屋さんが行うのは医療ではなく、財産の量や流れを決めることに過ぎないからです。

かといって、後見や生命保険が無力かというとそうではありません。

お金がしっかりとあり、流れも決まっておれば、認知症は恐るものでは無くなるからです。

例えば、まだ認知症保険などの商品を契約できる状態であれば、将来認知症と診断された後の資産形成が可能かもしれません。

さらにそのお金をどのように利用して欲しいかを司法書士に相談して、任意後見契約をしておけば、保険金はご自身の意思に基づいて利用されていきます。

認知症保険を組む場合は、司法書士にも声をかけてください。

お金がたくさんあっても、認知症になってしまえば、自分の意思通りに動かせないかもしれません。

せっかく認知症対策をしても自分のために使えないのであればそれは誰のための保険なのでしょうか。

お金の量、流れ、このどちらも対策して初めて認知症対策です。

昨今、CMなどでも認知症対策保険がよく取り上げてられています。

ぜひご興味がある方は、当事務所までご連絡ください。

認知症と遺言

2021-09-15

認知症になると、日常の様々なことに制限が発生します。

代表的なもので言うと、不動産売却ができなくなる可能性があります。

司法書士としても、意思確認をする場面、認知症の気がある方は特に気を使って意思確認をしています。

他にも施設の入所契約ができなくなるかもしれません。

預金が引き出せなくなる金融機関が発生します。

株式・有価証券の処分ができなくなります。

こういった不都合が色々出てくるのです。

この対策として、「成年後見制度」が存在します。

成年後見制度を利用し、管轄の家庭裁判所から成年後見人が選任されることにより、上記のような不都合を解消することが可能です。

ただ、あくまで現行の成年後見制度は「対処療法」でしかありません。

不都合が出たから仕方なく選任するというイメージが近いのです。

ただ、成年後見制度では実現できない問題があります。

それは「遺言」に関する問題です。

遺言、最後の意思表現と言えるかもしれません。

自分が死んだときに残っている財産をどう承継していくのかを示したり、時には家族への最後の気持ちを書き遺すことも多いです。

遺言の中で気持ちの部分については当然、どんな状態でも書き遺すことができます。

ただ、承継方法についてはこうはいきません。

遺言の作成は、「法律行為」です。

この法律行為には、意思能力が必要なのです。

意思能力、何のことでしょうか。

民法上では「自己の行為の結果を弁識するに足りる能力」と規定されています。

要するに、「自分がした契約等の結果どうなるのかを認識できるか」ということになります。

例えば、認知症の方が、施設の入所契約をする場合。

契約締結後に「なんで家から出ないといけないの??」となってしまうと、意思能力が不十分ということになるでしょう。

しかし、預金通帳から現金を引き出した結果お金が無くなる。この程度の理解であれば、多くの方に残っているでしょう。

そうです、この意思能力というのは、事案ごとに足りているか不十分かが判断されるのです。

では、遺言の作成はどうでしょうか。

「長男に全ての財産を相続させる」という単純な内容を作りたいとしましょう。

自分の財産が全て長男に行く、これは理解できるかもしれません。

ただ、この遺言を作れば、長女はどうなるか。次男の生活はどうなるか。

ここまで理解できているかというとどうでしょう。

こうなると、最後にうまくプレゼンした人に有利な遺言を作ってしまうということもあり得るのです。

これでは遺言作成に必要な意思能力があるとは言えないでしょう。

あくまで自分の財産を残した結果、相続人がどうなるのか。ここまでは理解してほしいと思います。

この辺り、より詳しい話も引き続きしていこうと思います。

 

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