Archive for the ‘業務日誌’ Category
業務支援ソフトの話。
司法書士の仕事には事務仕事が意外と多く、書類作成が占める割合がかなり大きかったりします。
日々登記業務や、裁判所へ提出する書類を作成しているのですが、その作成方法は司法書士の事務所によってバラバラです。
例えば私の事務所のように業務支援ソフトを使っている事務所。
現在では業務支援ソフトの数も増えてきており、価格競争・品質向上が進んできて、かなり楽に仕事を行うことができています。
私のように1人で事務所を行なっている司法書士であればほぼ業務支援ソフトは必須と言えるでしょう。
理由は、書類作成が素早くできるということもありますが、ミスの起こる可能性をかなり下がることができることが大きいです。
大人数の事務所であれば、たとえワードで書類を作成したとしても複数人で書類をチェックできるためにミスをマンパワーで減らすことが可能です。
しかし1人事務所ではそれができません。
業務支援ソフトを使えば、不動産の情報などは登記情報から引き写してくれますので、その部分のチェック時間は大幅に削減できます。
チェックするのは自分で情報を打ち込んだところだけで済むためにミスの起こりうる部分が最初から少ないのです。
このようにスピード面、安全面でメリットが大きい業務支援ソフトですが、デメリットは当然コスト面です。
比較的価格が下がってきたとはいえ、やはり数十万円単位の費用が必要となります。
この辺りを危惧してか、少数ではありますが業務支援ソフトを導入していない事務所もあります。
そういった事務所では、複数人でのチェック体制はもちろん、これまで使ってきた書式の貯金が大きな財産となります。
パソコンのデータの中には数十年間使ってきた申請書の書式がたっぷり蓄積しており、これらを実際の実務にあてはめて使っているようです。
このシステムで業務をしているのは、必然的にベテランの先生が多いということになります。
私のように、駆け出しの司法書士には到底できない業務スタイルです。
一見時代遅れのように思えますが、このシステムには業務支援ソフトに頼っている事務所にはできない強みもあります。
それは極々珍しい登記などが登場した場合です。
業務支援ソフトは一般的に、多く登場する形式を使いやすくしています。
変則的で、一生に一度出てくるかどうかというケースには中々対応していないのです。
つまりこういうときには経験がものを言います。
私もどうしても困った時には、前の事務所の大先生に力を借りたりしています。
どのシステムで仕事をしようと、そのシステムが全てではありません。
色々な力を借りながら、効率よく業務を進めていきたいですね。
無料相談の最近の傾向(R3.9まで)
暑い夏が終わり、段々と秋の足音が近づいてきましたね。
さて、司法書士業務には季節は基本的に関係ありませんが、月によって依頼の内容は大きく変わってきます。
そこで今回は久々に無料相談の傾向をお話していこうと思います。
今回の対象は、8~9月です。
暑い夏の真っただ中。例年であれば、不動産に関する相談は少し下火となります。
ただ、今年は少し傾向が違いました。
新築建物の登記に関する相談であったり、不動産売却の相談等々、不動産に関する内容のものが多くありました。
通常これらの相談は、年末~新年度に向けて増加してきます。
この季節に業務が重なる理由としては、確定申告の時期であったり、引っ越し・転勤が多くなってくる季節であるからです。
不動産に関する業務は、私たち司法書士が実際に動くことが求められるため、肉体的に忙しくなるのです。
しかし、今回は真夏にピークが訪れました。
理由はやはり、ウッドショックや時世の問題でしょう。
例年年末に訪れるべきピークが半年で遅れでやってきたようです。
真夏の移動は体にはつらいですが、少しずつ経済も動いてきたのかなとうれしい気持ちもありますね。
不動産に関する業務の他に増加傾向であったのは、成年後見に関するものです。
この業務は、医療従事者の方、老人保健施設等の方々が相談者となるため、面会制限などの影響をもろに受けてしまいます。
しかし、面会がいくら制限されようと、被支援者が抱える問題は待ってくれません。
時世が少し落ち着けばすぐに動き、司法書士へ連絡、制限が強まればまた案件を溜めざるを得ない。
こういった流れがずっと続いています。
これは今後も続くと思いますが、一つアドバイスを。
面会制限中に、先に司法書士へ相談をしておくことをおすすめします。
そうすれば、制限緩和時に早急な対応が可能となるのです。
後見業務に関しても私たち司法書士は実際に動くことが多くなりますが、事前に情報を共有していなければ、複数回面談が必要になり、期間も費用も掛かってしまいます。
事前に打ち合わせができていれば、作成するべき書類は事前に作成することもできますし、書類の収集といったどうしても時間がかかる部分はあらかじめ進めることもできます。
よりスムーズに被支援者が抱える問題を解決するためにも動けない時期にも司法書士へ相談することをしてみましょう。
このように、ここ最近はこの2分野に無料相談内容が集中しました。
これらの業務は即日解決するタイプの問題ではないのでできるだけ早く専門家へ相談することを心がけましょう。
ではまた相談内容に変化があればお話をしていこうと思います。
認知症の場合の意思確認
本日は、明石市内の病院に意思確認に行ってきました。
意思確認というのは、主に不動産取引の場合に当事者である、売主買主に登記申請意思があるのかを確認する業務のことです。
司法書士はたとえ権利証などの書類が揃っても、当事者の意思が確認できなければ登記が申請できないのです。
意思確認でよく迷うのは、当事者が認知症の場合です。
認知症=不動産を売買できないというイメージがありますが、厳密にはそうではありません。
認知症にも程度や、症状に違いがあり、認知症と診断されても、不動産取引ができる程度ということも十分にあり得ます。
判断方法は各司法書士により違いますが。一般的な判断材料としては、
・自分自身に関する情報が表示できる。(生年月日、名前、年齢等を答えられるか)
・不動産に関する記憶がはっきりしている(自分が所有している若しくは購入する不動産の性質や場所を答えられる)
・不動産の売却若しくは購入する意思を表明できる。
・動機を自分で述べられる。
この程度の判断能力はやはりほしい所です。
さて、そこで本日の意思確認ですが、まず、認知症の診断自体は出ていないとの聞き取りでした。
ただ、少し認知能力に不安があると関係者さんから聞き取ったため、不動産の契約の前から念のため意思確認へ動いたという感じでした。
実際に現場に行ってみると、口の動きが思わしくない様子。
ただ、あくまで問題となるのは意思能力であり、発話の能力ではありません。
先ほどの質問に対しても、ゆっくりとではありましたが、答えることができており、意思能力は問題ないという判断をしました。
立会人として、奥様にもご同席いただきましたが、第三者的立場として病院の看護師様にもご同席いただき、本人さんに意思能力が残っていることを確認できました。
このように、高齢者、特に認知能力の低下がある方の意思確認には、第三者を入れるなどの公平性も必要となります。
今回は、万が一相続になった場合の当事者である、配偶者の方にもご同席いただけるという状況でしたので、スムーズに手続きが進みました。
また、今回の配偶者の方は、万が一の場合は成年後見制度の利用にも前向きであり、私自身、際どい場合は成年後見制度を利用できるという状況でしたので、よりフラットな立場で判断をすることができました。
以上これは、意思確認を行った証拠としてもホームページ内に遺しておこうと思います。
今回は、認知症の診断がないパターンでしたが、仮に診断があった場合でも実際に会ってみないと意思確認はできません。
単に認知症の診断が出たからといって手続きをあきらめる必要はないのです。
あくまで認知症の診断は判断の要素でしかありません。
また、仮に意思確認ができない状態であったとしても、成年後見制度などを使えば、不動産を取引することは可能です。
認知症、成年後見で疑問がある方は是非当事務所までご連絡ください。
生前贈与のご依頼
最近、生前贈与の登記依頼が増えてきています。
終活であったり、生前整理といったキーワードが世間的にも認知されてきたことが一つの原因かもしれません。
ただ、司法書士が関与する生前贈与はいわば、最後の場面だけです。
「贈与を原因とする所有権移転登記」これができる士業は司法書士だけですが、生前贈与で重要なのは「そもそも贈与した方が良いのか」を検討する段階です。
というのは、贈与には贈与税という税金がかかるのです。
この贈与税、税金の中でも税率が高いものであり、また、元々の計算の基礎となる額も大きくなるため、税額も非常に大きなものになります。
そのため、「ただ今のうちに贈与しておきたい」という程度の漠然とした希望だけでするのは危険な手続きなのです。
最近多く依頼を受けた生前贈与の案件もその多くは税理士先生のご紹介が始まりでした。
相続時精算課税制度、配偶者控除などの税制を用いながらより負担の少ない形での贈与を実現していく中の最後の手続きを私が行ったということです。
ただ、それでは「司法書士は手続きだけをするのか」というと必ずしもそうではありません。
例えば、今回依頼を受けた案件では、税制の他、「遺留分」の対策、「後の相続人での紛争を防ぎたい」というご要望もあり、税理士先生とご一緒して、手続きのご説明を行いました。
遺留分であったり相続問題というのはやはり私たち司法書士のフィールドになります。
この場合には、司法書士も税理と同じく、手続き選択の際に頼れる専門家となるわけです。
では、結局どこに最初に相談すればいいのかというと、「一番実現したいことによって変わる」というのが一応の答えとなります。
例えば、「相続財産が多いので、相続税の対策を今の内からしたい」という場合は、先に税理士の先生を訪ねた方が話は早いです。
税金の面ではなく、「相続人に音信不通の人がいるため、今の内から何とか解決したい」であったり、「前妻との間に子供がいるから相続で揉めないようにしたい」等々、法律的にスムーズな遺産承継を目指したい場合は私たち司法書士を頼っていただいた方が確実です。
これはあくまで「最初に頼る先生はどちらか」というだけであり、税理士の先生に依頼してもどこかで司法書士は登場しますし、私の事務所へ最初に来ていただいても、いずれは税理士の先生と連携することになります。
大切なことは「自分だけでは決めない」ことです。
世の中には色々な専門家がいます。
ご自身の希望を実現するためには、世の中に多くいる専門家を上手く活用することが大切です。
「どこに相談していいかわからない」という方はまず、当事務所の無料相談をご利用ください。
登記のオンライン化と裁判のIT化
私たち司法書士の代表的な業務である登記業務。
この登記は、元々書面で法務局に申請する形でしか申請できなかったのはこれまでも何度かお話をしてきました。
書面申請の時代であっても、法務局へ申請を出す、そのものの時間は一瞬です。
しかし、その法務局に行くまでは当然ですが移動時間が必要です。
私は、全ての法務局に行ったわけではありませんが、多くの法務局は、駅から少し離れたところにあり、行くとなるとどうしても時間がかかってしまいます。
例えば、神戸市内で不動産の取引があり、対象の物件は明石という場合。
神戸市内から、明石の法務局までは、30分前後時間がかかります。
法務局が開いているのは、5時15分までということを考えると、4時30分ぐらいまでしか、取引は行うことができません。(実務ではこんなギリギリのことはありませんが。)
しかし、これがオンラインになると、5時10分に取引が終わったとしてもその場で申請が可能です。
このように、手続きのオンライン化は、その場に行く時間、その場から帰る時間を省略できることも大きなメリットです。
さて、この手続きのオンライン化。
司法書士が行う他の業務にも早く導入されてほしいものです。
例えば、裁判所での業務。
司法書士は、認定を受ければ簡易裁判所の代理権を得ることができます。
しかしこの裁判手続き、まだ裁判所への出頭が求められており、中々時間がとられてしまいます。
ただ、この裁判所での手続きも、法務局での登記申請と同じく、出頭してからの時間は一瞬という事件も多くあります。
これも例を挙げると、今は少なくなりましたが、「過払い金返還請求事件」これが代表的な例です。
この過払い金返還請求事件、私たちの業務のほぼ全ての部分を占めるのは、出頭前の書類作成の部分です。
当日は、先方の貸金業者はまず出頭しません。
そうすると、出頭しているのは原告側の私だけです。
当然、話し合うこともなにもありません。
次回の期日を決めるだけで終了です。
時間にして5分未満。
しかしそれでも移動時間は数十分はかかります。
正直、何をやってるんだと思うこともあります。
とはいっても双方欠席はできません。
原告側の私が裁判を止めることはできないので出席するしかないという流れです。
ただ、この辺りもIT化していけば話は変わっていきます。
ZOOMであれば、一瞬の期日でもそれほど苦ではありません。
他にも、裁判所へ提出する書類もオンライン上で申請可能にすれば、どこにいても書類を見て、どこでも書類が作成・提出できるということになります。
多くの役所手続きがオンライン化しているところを見ると、裁判所への手続きでもオンライン化できる部分は多いはずです。
これからそのような流れに転換していくことを期待しながら今日も裁判所へ出頭してきます。
司法書士と懲戒
司法書士は、業務を行うために司法書士会に入会しております。
私は神戸に事務所を構えているため、兵庫県司法書士会に登録をしており、他にも各都道府県に会が存在しています。
司法書士会では一般の方が会員を検索できるように、名簿も備え付けており、インターネットからでも検索をすることができます。
司法書士会に入っていると毎月、月報司法書士なる書籍が送られてきます。
それには、最新の判例であったり、法改正、豆知識等々様々なものが載っており、ためになる記事も多くあります。
読み物的な記事の中に、「懲戒事例」というものもこの会報には載っています。
割と詳細な事例が載っており、どの部分が悪かったのか、どうすれば良かったのかが読んでわかるようになっています。
司法書士が懲戒になるケースはいくつかありますが、私の体感としては、
・成年後見等での業務上横領(多くは一発業務禁止、若しくは一年以上の業務停止)
・本人確認、意思確認をしなかった(数か月~数年の業務停止が多い)
・事件放置(連絡、理由なく事件に手を付けていない)(数週間~数か月の業務停止が多い印象)
これらがトップというかワースト3によく出てくる懲戒事例です。
これに続くのが、「品位保持義務違反」というものです。
この懲戒事例は、様々な事件から派生し得るものです。
例えば、バックマージンを受け取っていたとか渡していたという例。
司法書士は、お客様や案件を業者などに紹介した場合に、バックマージンを受け取ってはいけません。
相手方で多いのは、不動産業者がほぼ全てを占めます。
不動産業界では、いわゆるバックマージンは特に違法ではないので、私たち司法書士相手であっても同じようにバックマージンを渡したり要求したりという関係になりやすいのです。
ベテランの先生や経験豊富な司法書士であれば、そういった業者とは付き合わなくとも他で十分仕事ができるため、きっぱりと断ることができるのですが、新人の司法書士などはやはり狙われやすいようです。
他には、誇大広告というものもこの品位保持義務違反にあたるようです。
具体的な例は中々難しいですが、「日本一安い司法書士」などの記載はふさわしくないようです。
最初に挙げたような3つのよくある懲戒については、ある意味わざと問題を起こしていますが、品位保持義務違反については、各会員の倫理観が非常に大切です。
懲戒事例を見て、「これで懲戒はかわいそう」とか「これで懲戒は意味が分からない」と感じてしまうということは自分の品位・倫理観がズレているのです。
これからも毎月会報を読みながら司法書士としての倫理観を高めていきたいと思います。
配偶者居住権の登記が。。
配偶者居住権。
民法等の改正により、最近登記ができるようになった新しい権利です。
司法書士業界でも、よく話題になる旬な登記です。
基本的なパターンとしては、夫婦の内の片方が亡くなった時にこの権利が登場します。
例えば、旦那さんが亡くなり、相続人は配偶者と子どもさんという場合を考えてみましょう。
不動産を所有している方が亡くなった場合には、相続登記が必要です。
今回の例では、相続登記のパターンとしては、
1残された奥さんの単独所有
2子の単独所有
3奥さんと子の共有
この三つのパターンが考えられます。
この3パターンの中で、不動産に引き続き奥さんが住む場合、1を選択することが奥さんにとっては1番立場が安定します。
自分の不動産に自分が住むという形になるためです。
ただ、このパターンにはデメリットがあり、奥さんの財産が増加するため、相続税の問題であったり、手続きを奥さんが亡くなった時にもしなければいけなかったりといくつかマイナスの面があります。
では、2のパターンはというと、手続き面、税金面では1に比べるとメリットがありますが、次は奥さんの立場が不安定になってしまいます。
所有者はあくまで子になるため、売却をすることも理論上可能になってしまうためです。
そのため、中間択として3のパターンを選ぶこともこれまで多くありました。
3のパターンのデメリットとしては、仮に売却をする場合などに、当事者が多くなってしまうため、奥さんと子に紛争があった場合に処分できなくなる可能性が出てくることが挙げられます。
そこで配偶者居住権の登場です。
配偶者居住権とは、例のパターンでは、所有者は子に、しかし、奥さんはそのまま住み続けてもいい。さらに奥さんの権利も安定する。という1.2のいいとこ取りのような状態を作り出せる権利です。あくまでイメージとしてはですが。
さて、今回この10日に関して疑義があったので、法務局へ照会をしていました。
当然、他の権利に比べて通達・判例も少ないため、登記が可能かを問い合わせたような形ですが、なぜかかなり怒られてしまいました。笑
これから通達等が出て、改めて確認してみようと思います。
今度はなんとか怒られないように穏便に進めたいと、反省しました。笑
当事務所では、変わった登記、調べても分からないような登記であっても全力で案件にあたることを約束します。
他の事務所でできないと言われた、煙たがられたという方もお気軽にお声掛けください。
清算結了の抹消・・・続き
以前お話しました、株式会社の清算結了登記の抹消登記が無事完了しました。
結局、添付書類としては、以下のとおりでした。
・上申書
・債務が残っていることの証明書
・委任状
以上です。
通常の清算結了登記の抹消登記のケースでは、清算業務が残っていることの証明として「財産が残っていることを示す」証明書を添付します。
例えば、法人名義の不動産がまだ残っていることを示す不動産登記簿の謄本。
法人名義の通帳口座の通帳などがこれに当たるでしょう。
ただ、今回は、対象会社には債務しか残っていませんでした。
前回も少しお話したように、債務超過の会社が会社を畳む場合は、特別清算や法人破産などの債務整理の手続きを経る必要があるため、司法書士だけの関与ではできないことがあります。
しかし、多くの司法書士が関与している会社はほとんどが中小企業であり、そこまで大規模な清算業務をすることはありません。
プラスの財産があれば株主に分配し、負債があっても代表者へ債務引き受けを行い、会社としての債務は0にして清算業務を完了させるのです。
今回のケースも基本線はこの債務引き受けパターンでした。
よって、一度目の清算結了をした時は、残債を債務引き受けしたことを株主総会で承認してもらい、清算業務を結了させていました。
ただ、その後に他の金融機関からの借り入れがあったことが判明し、清算結了登記の抹消が必要となったのです。
一度清算結了登記をした会社に債務が見つかった・・・
つまり、ほぼ間違いなく「債務超過」状態であるのです。
よって普通に抹消登記を申請しても登記は通りません。
そこで、「上申書」の内容が重要になってきます。
要は、「清算結了段階で、会社に債務が残らないこと」を上申する必要が出てきます。
その理由は様々考えられます。
可能性としてはかなり低いですが、借金だけでなく、それを上回るプラスの財産も見つかった。これもあり得ます。
他には、債務は見つかったが、金融機関が債権放棄をしてくれることが決まっている。これも理屈としては考えられますが、放棄するならわざわざ会社を復活させることを金融機関は求めないでしょう。
次に考えられることは、見つかった債務を全額代表者へ引き受けてもらい、法人の債務を0にする。これが今回パターンでした。
めったにない登記でしたが、今後もあるとすればこのパターンかなと思います。
上申内容としては、
・対象法人に債務が見つかったこと。
・この債務は代表者への債務引き受けがされることが金融機関との協議で決まっていること。
・よって対象法人が債務超過になることはないこと
以上を踏まえた上申となります。
登記申請の際、債務があることを示す証明書の他に、債務引き受け契約書の添付も求められるのかなと思いましたが、そこまでは求められず、無事登記が完了しました。
もし同じような案件にあたった方がおられたら、参考になさってください。
公正証書もついに電子化??
新規事業の補助金などの影響か、法人の設立が増えているのは以前お話しした通りです。
法人の中でも社会的な信用が高い形態としては、「株式会社」や「一般社団法人」などがあります。
これらの法人は、設立の登記申請の前に、公証人による定款の認証が求められているために、社会的な信用度が高くなっているのです。
この定款の認証には、まず「実質的支配者の調査」があります。
具体的には、会社の発起人などの出資者が暴力団関係者ではないことの審査となり、これを経ることにより、暴力団関係者が作った法人ではないことの証明となるのです。
しかし、この定款の認証制度、社会的な信用と引き換えに少し高い手数料がかかってしまいます。
正確な金額は、定款の文字数等にも関係してきますが、多くは5万数千円の手数料となります。
既に事業をしている個人の方が、法人に形態を変えたり、既に会社を持っている方が別事業部門として会社を設立する場合は、この程度の金額気にならないかも知れません。
ただ、多くの方は会社を設立することで事業を始めていくため、この手数料もバカにならないのです。
さて、この定款の認証ですが、現在は多くの場合、電子認証という形式がとられており、要はデータ上で定款を作成・認証しています。
実際に公証役場を訪れる必要はあるものの、それまでのやり取りも含めオンラインでの手続き進行が可能となっています。
ただ、今回のお話は、公証人が行っている業務の中で大きなウエイトを占める「公正証書」に関するニュースでした。
この公正証書、だんだんと社会的にも認知されてきたように思いますが、主に使われるのは「公正証書遺言」の場面です。
公正証書で遺言を作成することにより、紛失の可能性が減ったり、家庭裁判所での検認が必要なくなったり、本人以外の人が遺言書を偽造することができなかったりと多くのメリットがあります。
しかし、この公正証書は全文を自筆する必要こそないものの、公証役場に赴き、実印及び印鑑証明書を用いて本人確認、署名、押印が必須とされています。
遺言という重要な文書を作成する以上、仕方がないのかも知れませんが、永遠に残っていく形式とも思えません。
今回のニュースを目にした時は正直、「まだ早いかな」と感じました。
まだまだ無駄な押印、署名が世の中には多くあります。
それらが淘汰された後、遺言・登記などの重要な手続きを検討するという方針でもいいのかなと司法書士としては思ってしまいました。
ただ、こういった話が出てくること自体は素晴らしいことです。
パブリックコメント等にも注意を払いながら、また最新の情報を手に入れましたら、ここでお話ししていこうと思います。
相続登記義務化と司法書士業務の未来
相続登記が義務化されることについては、先日ホームページ内でお話した通りです。
「相続登記と言えば司法書士」というイメージにはなってきています。
神戸の法務局でも「相続登記は司法書士へ」というポスターがよく貼ってあります。
さて、そうなると、この相続登記義務化は司法書士業界にとって追い風となる。というのが大方の見方です。
当然、義務化がこのまま実現すれば相続登記の件数は増加するでしょう。
相続登記が未了の不動産もどんどん減っていくことでしょう。
そうなると相続登記を処理する業種が儲かる。
つまり司法書士が儲かるという流れです。
この流れは恐らく正しいです。
ただ、相続登記の義務化により、こうはならない予想もすることができます。
例えば、相続登記の義務化に伴い、登記の申請方法が簡素化されるとどうでしょう。
現行の民法、あるいは不動産登記法では相続登記を申請するには多くの戸籍謄本・除籍謄本等を収集する必要があります。これが第一のハードルです。
亡くなった方が一度も転籍等をしていなかったり、親族がみなさんお近くにおられればそれほど大変ではありません。
しかし、転籍・養子縁組・婚姻・離婚などが複数回あれば集めるべき戸籍も大量になっていき、一般の方では中々集めきれないということもよくあります。
ただ、今回の義務化に伴い、個人の戸籍の変遷が一つの役所で収集可能となればどうでしょう。
色々な役所に郵送請求をし、何度も役所へ足を運ぶ必要がなくなれば、一般の方でも十分収集が可能となります。
これは、近い未来で実現ができそうな気もします。
第二のハードルは、遺産分割協議書等の書類の作成です。
相続人が不動産を共有で持つ状態を避けるため、多くの場合は所有者を少なくしていきます。
その方が、後の手続きが楽になったり、相続人がどんどん増えていくことを避けられるからです。
このハードルは既に解消されつつあります。
理由はインターネットの普及です。
一般的な相続登記に用いる遺産分割協議書はネットの検索で調べることができます。
正直、プロの司法書士から見るとお粗末なものもありますが、法務局が親切になっていることもあり、ネット程度の書面でも登記が進んでいくようです。
3つ目のハードルは、不動産の調査です。
持っている自宅のみであれば、不動産を相続し忘れることはあまりありませんが、田舎の山林であったり、市道を持っていた場合はよく登記漏れがあります。
現在は、司法書士が相続人から依頼を受け、各役所へ「名寄せ」という形で不動産の評価証明書を取り寄せることでできる限り漏れなく登記することができています。
ただ、相続登記の義務化により相続人への所有不動産の通知は高い確率でなされるようになるでしょう。
相続財産に不動産があることを通知しなければ登記が進むはずがないからです。
つまりこのハードルは義務化に伴い解消されると思います。
最後のハードルは登記申請そのものです。
一般の方は、書面で申請書を作成し、法務局へ出頭し、登記申請を行うことが多いでしょう。
しかし、少しずつですが資格者以外の方へ向けてのオンライン申請も普及しています。
これがもっと高い割合で実現すれば、法務局へ行く必要もなくなるのです。
これらのハードルが相続登記の義務化に伴い解消されれば、司法書士の業務はむしろ減少するでしょう。
しかし、私はある意味当然ではないかと思います。
登記とは本来手続きであり、一般の方でもできるような制度であるべきだからです。
誰でもできる業務が減っていき、司法書士にしかできない業務をやっている司法書士が残っていく、そんな時代へ変わっていく時なのかもしれません。
以上が相続登記の義務化に伴う、司法書士業界の変化のマイナス面での可能性です。
最新の情報を逐一収集し、生き残る側の司法書士になっていこうと感じたニュースでした。
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