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相続放棄と分譲マンション
司法書士に関するニュースでまた面白いものがあったのでここで共有をしたいと思います。
現在、築年数40年を超える分譲マンションが70万戸を超えている。という内容のものでした。
「高齢化」したマンションは、住民が減っていることも多いです。ただ、築年数に応じて修繕箇所はどんどん増えていき、修繕費は新築時よりも多くかかります。
住民が減るのに、修繕費が増える。そうです、一人一人の負担は増加するのです。
通常、不動産を購入するメリットは、賃料が掛からないことにより、代金完済後は月々の支払いが少なくなることが挙げられます。
ただ、老朽化したマンションでは、このメリットが無くなってしまうのです。
それどころか、処分したくともできない、負の財産となる可能性すらあるのです。
神戸にも多くの分譲マンション、高層マンション、タワーマンションが多く建てられています。
タワーマンション、いいですねえ、みんなが憧れるステータスになってきました。
ただ、タワーマンションのデメリットも多く報道されるようになってきました。
例えば高額な管理費・共益費というものが挙げられます。
特に超高層のタワーマンションともなると、マンション自体が一つの街のようになっており、コンビニがあったり、ジムがあったり、学習スペースがあったりと住民が利用できる様々な設備が整っっています。
これらの設備は、タダで利用できるわけですが、当然管理費が掛からないことはありません。
全ての設備は劣化していきます、管理人も必要です。
こういった費用は、住民が分担していくのです。
また、こういった費用の負担割合はお部屋の面積であったり、どの階に住んでいるかで変化するようです。
タワーマンションの高層階となると、取得費用も高くなり、こういった管理費も高くなるのです。
十分な収入があり、設備も新しい間は高額な管理費を支払ったとしても得られる利益は大きいかもしれません。
ただ、この高層階を相続した場合はどうでしょう。
新築時に近いタイミングでの相続であれば、高額財産を相続できるためメリットとなるでしょう。
しかし、冒頭に挙げたような老朽化した高層マンションは、誰も相続したくない。
ということも今後ありうるのです。
そうなると、相続人が採る方法は相続放棄です。
負の財産を相続しなくて済む相続放棄ですが、不動産相続の場合は全ての負担がすぐになくなるとは限りません。
不動産には管理義務があるためです。
相続財産管理人を選任し、費用をかけながら不動産を処分するほかないのです。
費用も時間もかかってしまいます。
「価値の少ない財産は自分の代で処分を。」これは私のホームページ内で何度も申し上げています。
それに加えて、「今後負担になりうる財産も自分の代で処分を」これをもっと意識していくことが大切なのかもしれませんね。
当事務所では、不動産の処分、相続放棄のサポートに力を入れています。
神戸市以外の方も、気になる不動産がある、債務のある親族が亡くなったという方はお気軽にお声掛けください。
相続放棄の統計
司法書士として、業務に関係する統計であったりデータというものは注意して見るようにしています。
今日は、その中で「相続放棄」に関する統計をご紹介します。
もし、ご自身で相続放棄をしようと考えている、身近に相続放棄が必要な方がいるという方は参考になさってください。
データは、司法統計によるものです。
まず、相続放棄の件数から。
相続放棄の件数は、平成28年の19万7656件から令和元年の22万3415件まで、右肩上がりで増加しています。
当然、死者数が増加するとこの相続放棄の件数も増加するので、死者数との比率でみると、
平成28年15%、令和元年は16%とこれもやはり増加傾向です。
となると、親族が亡くなった時に、相続放棄が必要な方の数は今後も増えていくことが予想されます。
自分には関係がない話とは考えずに、自分に無駄な債務が降りかからないように、うまく立ち回ることが大切なのです。
次は、相続放棄の申述を行った場合に、無事認容される割合を見てみましょう。
これは令和元年の数値です。
この年に申述され、事件が完結した22万2924件の内、認容となったものは21万7747件で、割合にすると97.67%となります。
これを見ると、「ほぼ認められる」と感じると思います。
その通り、相続放棄というのは基本的には申述をすれば高確率で認められるのです。
そこには、相続放棄というものは「期間」が法定されているので、申述する側も認められるかが判断しやすいという理由があります。
相続放棄は、基本的には3か月以内に行わなければいけません。
逆に言うと、3か月以内にしておけば、却下されるわけがないのです。
これが、97%という高い認容率に繋がっています。
ただ、反対に、3か月経過後の相続放棄は中々ハードルが上がります。
被相続人が亡くなってから3か月経過後に相続放棄を行う場合、「3か月の起算点が被相続人の死亡時ではなかったことを疎明しなければならないのです。
この疎明が出来なければ、相続放棄が認められることはありません。
そして、この相続放棄、一発勝負です。
一度自分でやってみて、無理だったら司法書士に頼むということはできないのです。
これが相続放棄の怖い所です。
このような点から、「3か月経過後の相続放棄は司法書士へ」と言われているのです。
以上が、直近の相続放棄に関する統計です。
もしご自身でこれからやろうと思う方は、まず、「被相続人の死亡から3カ月経過しているか」を考えてみてください。
3か月経過しているなら、万が一のことを考え、司法書士へ依頼することをおすすめします。
相続登記の義務化。住所変更も??
相続登記が義務化されることはこれまでもお話をしてきたとおりです。
具体的には、
・自己のために相続の開始があったこと
・対象の不動産の所有権を取得したこと
を知った時から3年以内に相続登記をしなければならないとされることになります。(遺贈なども含まれる)
この「自己のために相続の開始があったこと」については、私のホームページ内でもお話したことがあります。
相続登記の場面ではなく、相続放棄の場面ですが。
相続放棄の申述は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければなりません。
相続放棄については多数の判例もあるため、相続放棄の義務化がなされた後は、こういった判例も生かされていくのではないでしょうか。
さて、相続放棄の場合は、この3か月以内に相続放棄をしなければ相続放棄ができなくなる、すなわち相続するしかなくなります。
では、今回の法改正である、相続登記の義務化ではどうかというと、「10万円以下の過料」を科される扱いとなるようです。
10万円。。。痛いですね。
相続登記については、所有者不明土地を解消するために多少の罰則は必要かと思います。この10万円の額がどうかは別として。
ただ、今回は追加情報として、相続登記だけではなく「氏名変更の登記」であったり「住所変更の登記」も義務化されるようです。
司法書士のイメージとしては商業法人登記に近づいたように感じます。
商業法人登記は、例えば代表者の住所変更であったり、会社の本店が変わった場合には「2週間以内」に変更の登記をしなければいけないことになっています。
今回の改正により不動産登記に関しても「変更があればすぐに登記」という扱いに変更となるわけです。
私たち司法書士としては悪い話ではありません。
当然、住所変更などの登記件数が増えるわけですからね。
ただ、これは前回の相続登記義務化に関しての記事でも申し上げましたが、義務化には簡略化もセットになるべきです。
例えば、住所・氏名の変更をすれば自動若しくは自分自身で簡単に登記ができるようなシステムにいつかはなるでしょう。
そうなると私たち司法書士の仕事はむしろ減少することも十分にあり得ます。
そうなった場合に、消えていく司法書士事務所も当然増えていくでしょう。
しかし、私たちの仕事は本来、「誰にでもできるはずの仕事を代理で行う」仕事です。
そんな司法書士業界の中でも私にしかできない仕事を増やしていこうと改めて感じた今回の法改正でした。
法改正は2024年施行予定です。
相続放棄の照会について
神戸の司法書士事務所にもいくつかの種類があります。
不動産登記を中心に、不動産取引に力を入れる事務所。
税理士さんなどの士業と協力し、会社・法人登記が得意な事務所。
そして、私のように成年後見であったり、債務整理なども幅広く行なっていく事務所などがあります。
このような事務所形態が多いのですが、「裁判所提出書類の作成」という業務も司法書士にはあり、司法書士の歴史を見ていくと実はこの業務が元々の業務であったりもします。
ただ、私が知る限りですが、この裁判所提出書類の作成に特化した事務所はあまりありません。
司法書士の本来業務ということもあり、この裁判所提出書類の作成業務を能力的にできない司法書士はいません。
にも関わらず、事務所としてはあまりやりたくないという司法書士は多くいるのです。
その理由は、「慣れていないから」「調べないとできないから」という理由がほとんどです。
やはり、よくやっている業務を流れるように行う方が効率が上がるので、ある意味仕方がないのかなと思います。
そこで、裁判所提出書類の作成は私の事務所のように、日頃からその業務を行なっている司法書士に依頼しましょう。
さて、導入が長くなりすぎました。
私の事務所は、相続放棄の申述書作成を多く行なっているのですが、最近それに付随する業務も受任しました。
具体的には、「相続放棄の有無に関する照会」というものです。
これは、ある相続人が相続放棄をしたかどうかを確かめるための制度です。
この照会制度はあまり利用する場面が多くありません。
その理由は、基本的には他の相続人が相続放棄をしたかどうかを知るメリットが多くない。
メリットがあったとしても、同じ親族内であれば直接聞けば済む。
といった理由があります。
では、なぜ今回この制度の利用をしたかというと、ある相続人が相続放棄していれば、自分が相続人となり、相続放棄をしたい。
ただ、その相続人の連絡先が分からず、自分が相続人になっているのかすら分からない。
というケースでした。
相続放棄は、「自分が相続人になっていることを知ってから」3ヶ月以内にしなければなりません。
当然、相続人となっているか分からない今回のようなケースでは3ヶ月は進行しないのですが、法的には不安定な立場が続きます。
そこで、先順位の相続人が相続放棄しているかをこちらから積極的に調べて、スッキリしようという流れになったのです。
このように、様々な業務を行なっているからこそのご提案ができます。
とりあえずどこに相談すべきか分からないという方は是非、当事務所までご連絡ください。
相続放棄してるかどうか
最近、こんな事例がありました。
・音信不通の兄弟がどうやら亡くなった様子
・亡くなった兄弟には息子がいるが、その甥とも音信不通である。
・素性不明の貸金業者から電話がかかって来た。(おそらく亡くなった兄弟の債権者)
以上のような事例です。
通常、親族が亡くなった場合、第一順位として息子、娘等の子がまず相続人となります。
この場合、亡くなった兄弟には息子がいるため、相続人はその甥っ子というのが基本的な考え方です。
日本の相続では、先順位の相続人がいる場合、後順位の相続人は相続権がありません。
つまりこの場合、相続権は甥がすべて持つため(配偶者が存命であれば配偶者と共に)、兄弟である依頼者は相続に関して悩む必要はありません。
では、どのような場合に兄弟に相続権が来るかというと、先順位者に相続放棄があった場合です。
第一順位の相続人である甥が、被相続人の債務を相続しないために相続放棄をしたとしましょう。
すると、相続権は第二順位である、直系尊属へと移ります。
被相続人よりも年長者である直系尊属は亡くなっていることも多いです。(今回もそうでした。)
そのため、次の第三順位である兄弟姉妹つまり依頼者に相続権が来ることになるのです。
先順位である甥が相続放棄をしていれば、依頼者にも相続放棄が必要というある意味不安定な状態での相談だったのです。
甥っ子に連絡が取れればそれで解決ですが、亡くなった兄弟含めて音信不通。
どうすればいいのか。というのが今回の依頼でした。
今回のようなケースでは、「相続放棄申述の有無の照会制度」が利用できます。
この制度は、各添付書類と申請書を家庭裁判所に提出することにより、先順位者が相続放棄を行っているかを照会できる制度です。
今回にぴったりな制度です。
この制度は無関係の他人が利用できる制度ではありません。
申立権利者は、相続人又は利害関係人となります。
今回の依頼者は、まだ相続人ではないため、利害関係人となります。
このように、相続放棄の有無を知る利益を持つものが利害関係人となるのです。
今回の照会で、甥が相続放棄をしていれば、依頼者も相続放棄を。
していなければ相続人ではないことが証明できるわけです。
今回の相続放棄の有無の照会制度ですが、私は以前にもしたことがありました。
以前は今回のように相続放棄の前提としてではなく、相続登記の場面でした。
これについては次回以降に書いてみたいと思います。
当事務所では、債務整理等の様々な業務を行っています。
司法書士への依頼は、相続及び債務整理であったり、成年後見及び遺言等々、様々な業務が複合してきます。
幅広い業務を行っている司法書士へ依頼することでワンストップの対応を受けることができます。
何かお困りのことがあれば、お気軽にお声掛けください。神戸市以外の方も大歓迎です。
相続放棄はみんなで一緒に!!
無料相談で、相続放棄に関する相談が相変わらず多いので、相続放棄に関する情報をお話しようと思います。(実はこの相続放棄に関する業務は、司法書士の中でもやっていない事務所も多いので、ホームページ内などで相続放棄に関する情報が多い事務所に依頼するようにしましょう)
さて、この相続放棄ですが、よくあるパターンとしては、被相続人の生前から借金が多いことが分かっている、もしくは財産が全くないことは分かっているという方が、多く利用する制度です。
このような場合、基本的には「相続したいと考える人はいません」
つまり、自分以外の相続人も相続放棄をしたいと考える可能性が非常に高いのです。
こうなると、個別に相続放棄をしていくことには何のメリットもありません。
例えば、以下のようなケース。
・被相続人は、プラスの財産は少額の預金だけ。マイナスの財産は消費者金融の借金のみ。
・相続人は、第一順位として、配偶者と子供3人。被相続人の両親は死亡しているが、兄弟は2人と死亡した兄の甥っ子がいる。
・あなたは被相続人の長男。
このようなケースで、あなたが相続放棄をしたいと考えたとしましょう。
その場合、あなただけが相続放棄をしても、あなたのお母さんと兄弟が相続放棄したことにはなりません。
また、あなただけが相続放棄をしても、被相続人の兄弟・甥っ子はまだ相続人ではないため、相続放棄をすることはできません。
次に、あなたの相続放棄を知り、お母さん・兄弟が相次ぎ相続放棄をしたとしましょう。
そうなると、被相続人の兄弟・甥っ子が相続人となり、相続放棄が必要となります。
仮にこのような流れで皆様相続放棄をなさった場合、司法書士等の専門家への依頼は、少なくとも3回になります。
私の事務所の報酬基準であれば、一回につき4万円+2人目以降は+2万円なので、22万円となります。
しかし、最初から全員が私に依頼していた場合、依頼の回数は1回となります。
そのため、18万円ですべての手続きをすることができます。
基本的には、他の事務所に依頼しても、相続放棄はまとめて依頼した方がかかる費用は安くなります。
また、費用面だけでなく、リスク面でもメリットが大きいです。
特に被相続人の兄弟・甥っ子は「自分がいつ相続人となるのか」がはっきりとは分かりません。
そのため知らない間に自分が相続人となっており、知らない間に貸金業者から通知がきており、相続放棄ができないなんてことも発生し得るのです。
費用面・リスク面、どちらを考えても相続放棄はまとめて依頼するとメリットが大きいです。
是非、相続人の皆様でお話し合いをした上で手続きを依頼してください。
当事務所は、相続放棄の経験も豊富であり、他の相続人への注意喚起も含めて総合的にサポートをしております。
対応地域も神戸市に限りません。無料相談もございますので、お気軽にご連絡くださいませ。
空き家の相続放棄について
最近、無料相談でよくある内容として、「親が遺した財産は住んでいた家だけだが、相続放棄したい」「相続登記をしても意味がないので、相続放棄したい」というものがあります。
こういったケースでは、対象の相続財産である不動産がかなり古かったり、相続人である自分は遠方にいたりして管理できない等の理由がよくあります。
確かに、不動産を処分するのも、管理するのも費用も労力もかかります。
特に対象不動産に金銭的価値があまりないような場合は、労力と見返りが釣り合わないこともあります。
しかし、この問題は、相続放棄するだけでは解決しないことが多いです。
というのは、相続放棄によりその不動産の所有権を取得しないことと、その不動産を放置していいことはイコールではないからです。
なぜかというと、民法940条がその原因です。以下民法940条。
第940条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
この条文により、相続放棄をしたからといって管理義務がなくなるわけではないことが分かります。
では、相続人がいなくなるまで順番に相続放棄が完了すればいいのかというとそれでも管理義務は当然にはなくなりません。
この場合は「相続人不存在」という状況となり、「相続財産管理人」を選任しなければいけないのです。
そして、この相続財産管理人に対象不動産を引き継ぎ、やっと管理義務から解放されるのです。
しかし、問題は、ここまでの手続きの費用です。
まず、相続放棄の費用は各相続人が負担し、手続きをします。
次に、相続財産管理人が管理にかける費用は「相続財産」から第一に使われます。
しかし、これが少ない場合は「申立人の負担」つまり、相続放棄をした相続人が負担することになるのです。
こうなると、何のために相続放棄をしたのか分かりません。
つまり、相続財産に不動産がある場合、相続放棄をせずに解決を目指した方がかかる費用が少なくなることがあるのです。
代表的な解決策としては、不動産を売却する方法があります。
対象不動産に金銭的価値が乏しい場合、各種手続き費用を差し引くと、プラスマイナスゼロになることもありますが、これは金銭的負担なく管理義務から免れたことを意味します。
現在、建物を解体するにも多大な費用が掛かるため、仮にほぼタダで売れたとしても、解体費用分の価値で売れたことを意味するのです。
このように、相続財産に不動産がある場合、あなたが処分しなければ、他の相続人若しくはあなたの相続人の内誰かが処分しなければなりません。
問題を先送りにせず、早めに解決することを目指しましょう。
当事務所では、不動産業等の他業種と連携をしながらこういった案件をできる限り少ない労力で解決するのをサポートしています。
「現状、まだ相続は起こっていないが、将来的はそうなるので何か備える方法はないか」といった形でも相談を承ります。
対応地域についても、不動産が神戸などの対応地域内の案件はもちろん、日本中どこに不動産がある場合でも全力で対応いたします。
まずは無料相談を利用して、解決にあたってみてはいかがでしょうか。
少し変わった相続放棄がありました。②
今回は、相続放棄についての続きをお話しようと思います。
前回は、司法書士が扱う相続放棄の中で、3か月が経過しているケースでよくあるパターンをお話しました。
事件を受任した時は私も正直、「よくあるパターンだな」と思っていたのですが、最後の最後でそうではありませんでした。
というのは、相続放棄についての聞き取りがあらかた終わった後、「一つご質問いいですか。」
と聞いてくださったのがきっかけです。
私が、「はい、いいですよ。」と言うと。
「被相続人の死亡について医療ミスがあったかもしれないんですが、それは関係ないですか?」とのことでした。
驚いた私は、もう一度話を聞いてみました。
すると、亡くなった被相続人の死亡について弁護士さんに調べてもらっている最中だったことが判明しました。
私は、「あー聞いてよかった。」と内心思ったのを覚えています。
というのは、今回、相続放棄を全員でしてしまうと、もし医療ミスがあった場合に損害賠償権が誰にもなくなってしまうからです。
親族に隠してする程度の借金と、医療ミスがあった場合の損害賠償請求権。
どちらの方が金額が大きいかは明らかです。
そこで、弁護士さんと連携しながら「熟慮期間の伸長申立て」に手続きを変更したのです。
通常、この熟慮期間の伸長手続きとは、被相続人が亡くなったあと、相続財産を調査する期間が3か月では足りない時に利用します。
私も、通常のケースでは書類作成をしたことがあるのですが、今回は3か月経過後の相続放棄との複合パターンでした。
要は、「死亡~3か月は既に経過しているが、本来の起算点はここなのでそこから3か月を数えるべきだ」という主張と、
「さらにその期間は3か月では足りません」という二つを主張する書類を作らなければいけません。
私も、様々な資料を探し、時間こそかかってしまいましたが、弁護士さんとの連携もうまくいき、手続きを完了することができました。
後は、主の事件である、損害賠償請求がうまくいくのを祈るだけです。
司法書士として、今回の事件は非常に「司法書士らしいな」と感じました。
というのは、弁護士さんなどの他業種と連携をしながら、依頼者の利益に一番近づくように方針を決める。
この過程こそ司法書士らしい業務だなと考えているからです。
実際に訴訟を勝ち抜き、直接的に依頼者に利益をもたらすのは弁護士さんかもしれませんが、最悪のケースにならないように。
総合的に考えて利益となるように、道を作っていくような司法書士になりたいなと改めて感じた今回の事件でした。
当事務所では、相続放棄はもちろん、相続、後見、債務整理等多様な業務を受任しています。
どうぞ無料相談を利用して、悩みを解決してください。
神戸市内に限らず、ご対応いたします。
少し変わった相続放棄がありました。①
先日、無料相談にて相続放棄の依頼を受けました。
司法書士業務の中でも比較的メジャーな分野であるからか、無料相談の件数としてはまずまずの分野です。
さてしかし今回のケースは、通常の相続放棄ではなく、被相続人の死亡から約一年間が経過しているケースでした。
このホームページ内でもご説明していますが、相続放棄には3か月以内という期間制限があります。
しかし、この3か月というのは、必ずしも被相続人が死亡してから3か月ではありません。
例えば、相続放棄される方が兄弟の場合、3か月の起算点は「自分が相続人となったことを知った時から」というのが基本となります。
これはどういう意味かをご説明します。
相続人になるためには、順位があります。
配偶者がいればその方は必ず相続人になります。(絶対相続人)
子がいれば第一順位の相続人。
子がいなければ親などの直系尊属が第二順位に。
それもいなければ兄弟が第三順位として相続人となるのです。
さて、通常はこのように先の順位の相続人が「いない」場合に相続人となるのですが、相続放棄が順に行われることにより相続順位が進んでいくこともあるのです。
被相続人に債務が多く、子が相続放棄をしたとしましょう。
そして次は第二順位の直系尊属が相続人となり、また相続放棄をします。
すると兄弟に相続権が回ってきます。
しかしこの時点で、相続開始からはタイムラグがあるのが分かります。
当然ですが、相続放棄は被相続人の死亡日の即日に行うことはほぼ不可能です。
つまり、順々に相続放棄が行われるためには短くて数週間、長くて数か月の期間がかかるのです。
そのため、第三順位である兄弟が相続人となるまでに時間もかなりかかり、自分が相続人となったタイミングにすぐ気づくことができないことが多いのです。
にも関わらず、被相続人の死亡から3か月の起算をしてしまうとあまりにかわいそうです。
よって兄弟が相続放棄をするための期間は「自分が相続人になったことを知った時から3か月」ということになるのです。
次のケースは、自分が相続人であることはすぐに知ったが、「相続する財産が何もない」と考えていた場合。
これも被相続人の死亡から3か月を起算することにはなりません。そしてこれが今回の相談のケースでした。
被相続人は年金で生活をしており、預貯金・不動産もほぼなく、入ってくる年金で施設利用料を払っているというケースです。
しかし、被相続人の死亡より1年近く経過した後、貸金業者が数十万円の請求書を送ってきたのです。
当然、相続人としては寝耳に水であり、どうしたらいいか分からないということで当事務所へ依頼があったのです。
こういったケースも実は多くあり、書式もある程度持っていました。
大体の話を聞いて、書類を作ろうと思った時。。。
どんでん返しがあり、手続きの方針が大きく変わってしまいました。
その話は次回にしたいと思います。