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債務整理に時間がかかるパターン

2021-05-19

現在、消費者金融等々の対応人数を減らしている影響からか、債務額確定までの期間がかかっている話は以前にもした通りです。

今回はそれ以外に期間として長くかかってしまうパターンについてお話をしたいと思います。

そのパターンは、「債権譲渡」「代位弁済」がされるパターンです。

まずこの二つについてお話しします。

 

債権譲渡とは、読んで字の如く、債権を譲渡することです。

譲渡と言うと、無償で渡したことをイメージされるかもしれませんが、多くの場合は「債権が取引」されます。

「ん??債権が取引される??」と疑問に思われる方もおられるかも知れませんが、実際にあることです。

例えば、以下のような債権があったとしましょう。

・債権額100万円。

・返済期限は去年。

・返済は滞っている。

このような債権。額面で見れば100万円の価値がある債権です。

ただ、返済期限が既に1年経過している債権です。

すぐに完済される可能性は極めて低いでしょう。

すぐに完済されないということは、完済してもらうまでに期間も労力もかかります。

この負担を他の会社に負担してもらう代わりに、100万円以下の価格で債権を売り渡すのが債権譲渡の役割です。

 

二つ目の代位弁済についてもお話をしていきます。

代位弁済とは、債権譲渡で例に出したような債権を先に債務者に弁済することです。

「え??代わりに払ってくれるの??」と思われると思います。

そうなんです。

ただ、払ってもらって終わりというわけでは当然ありません。

代わりに払った会社は、当初の債権者に代わり、債務者に「求償権」という権利を持ちます。

つまり、先に代わりに返済することにより、債権者を変更することになるのが代位弁済のイメージです。

 

では、これらの手続きがあるとなぜ債務整理に時間がかかるのかをご説明します。

これらの手続きは、債権譲渡にしても代位弁済にしても、「債権の評価」をすることが必要になります。

先に例に示した債権を90万円と評価するのか、85万円と評価するのかを精査する期間が必要なのです。

また、これらの手続きには当然事務作業も増えていきます。

よって債務額の確定をするまでの期間は必然的に伸びていくのです。

債務額確定までの期間が伸びていくのは、デメリットだけではありません。

これはこれまでにもお話ししてきましたが、債務整理を行う方は、「できるだけ早く返済開始したい」という方は少ないです。

できる限り返済開始までにお金を貯める、この方が債務整理の成功率が上がるのです。

差し当たっての返済が難しい方も多くおられるでしょう。

まずは司法書士に相談し、返済を止める手続きを行なっていきましょう。

債務整理の報酬について

2021-05-17

司法書士会からは、時よりメールが届きます。

司法書士業務に関わる法改正であったり、頭に入れておくべきニュースなどが主な内容です。

さて、本日もいつものようにメールが届いたのです。

また法改正か何かかと思い、さっと目を通したのですが、珍しい内容のものでした。

今回の内容は、「債務整理事件における報酬に関する指針」というものでした。

現在、司法書士業界は、報酬自由化となっており、各事務所が自由に報酬を定めることができます。

極端な話では、倍近くの報酬が設定されていても、それだけで咎められることはないのです。

時より、司法書士会の電話相談などでも、「依頼した司法書士費用が高すぎる気がする」などの相談を受けることがありますが、はっきりと「確かに高いですね」と言うことができないのもこの報酬自由化によるものです。

さて、そんな報酬が自由化されていると、各事務所で費用を決定するのが難しくなります。

昔は、HPなどで報酬を事務所ごとに見比べることはなかったため、事務所ごとの報酬規程は、事務所に行ってみないと分かりませんでした。

しかし、現在は、事務所に行く前から報酬を見ることができます。

そうなると、少しずつ報酬をHPで明示する事務所が増えてきます。

そして、地域ごとの司法書士費用に相場ができていきます。

こうして神戸であれば神戸の、大阪であれば大阪の司法書士相場が完成していきました。

このように、司法書士費用の中で「相続登記」であったり、「不動産取引」の業務に関してははっきりと費用が明示されてきています。

ただ、債務整理業務に関しては、まだまだ事務所ごとに費用を取るタイミングもまちまちで、中々費用を比べることが難しくなっています。

例えば、「基本契約」であったり、「減額報酬」といった費用があります。

基本契約は、債務整理の各手続きの前提となる契約のことで、この時点で費用が発生する事務所が存在します。

もう一つの減額報酬とは、主に任意整理の場面で、交渉により債務額を減額した場合、減額幅に対して報酬を取得する制度のことです。

これらのタイミングでの報酬発生は当然違法でも何でもありませんが、取っている事務所と取っていない事務所があるのが現状です。

もし債務整理を依頼する場合は、これらの報酬を含んだ総額での比較検討をすることが大切です。

さて、今回メールが来た、債務整理事件における報酬に関する指針には、減額報酬に関する指針も示されており、減額幅に10パーセントをかけた額までの報酬を受領することが認められていました。

ただ、この10パーセントというのは場合によってはかなりの高額となります。

他にも、任意整理であれば、一社5万円を超える報酬を受けることができない等、具体的な額が示されていました。

当事務所では、減額報酬などの付加報酬は一切受け取っておらず、当然今回の指針内での報酬設定(半分程度)となっておりますので、安心して当事務所へご依頼ください。

 

これからも気になった情報があればどんどん開示していきたいと思います。

所有権放棄について

2021-05-14

以前より、相続登記義務化についてのニュースは何度かお伝えしてきました。

それに伴い、所有権放棄=土地所有権の国庫帰属制度についてもお話をしたことがありました。

現在、日本では相続登記が義務化になっていないため、主に山林や田舎の土地で相続登記が長期間未了になっています。

相続登記が終わっていない土地の多くは利用価値が乏しいものが多いのは事実ですが、市区町村などの自治体は固定資産税を課さなければならず、相続登記が終わっていない状態では不都合が生じます。

また、仮にこういった土地に利用価値が出てきた場合でも、相続登記が終わっていない状態では新たな土地利用者に名義を変更することができず、より一層土地の価値を下げてしまうことに繋がります。

こういった問題が段々と表面化したため、相続登記の義務化に向け、日本は舵を切ったのですが、相続登記には当然費用がかかります。

費用軽減などの方策も考えられているようですが、戸籍の収集などには労力がかかり、これは引き続き相続人にのしかかる負担となるでしょう。

それに加えて、やはり大きな問題は、相続した不動産そのものをどう処分するのかという問題です。

前回お話はしましたが、10年分の管理費等を国に納めることにより、所有権を国庫に帰属させられるようになるようです。

ただ、前回私が手に入れていなかった情報を手に入れたのでお話をします。

この国庫帰属制度には「できない土地」についての条件があるようです。

具体的には、

①建物や通常の管理又は処分を阻害する工作物等がある。(更地ではない)

②土壌汚染や埋蔵物がある。

③崖がある。

④権利関係に争いがある。

⑤担保権等が設定されている。

⑥通路など、他人によって使用されている土地に該当する。

以上の場合は、所有権放棄ができないようです。

④~⑥についてはある意味仕方がないように感じます。

国庫に帰属した土地に第三者が権利関与するわけですから、これは避けた方が良いように思うからです。

ただ、①~③はどうなのでしょうか。

前述のように、この所有権放棄は、「利用価値の乏しい不動産の所有者から離脱する」ための制度です。

①~③の条件はそのまま不動産の価値を下げる要素になっているため、この条件があると放棄したい不動産が放棄できない状態になるように思うのです。

利用価値の低い①~③のような不動産こそ放棄を認めることにより、相続登記も進むように思います。

まだ、条件を詰めていく段階だとは思いますが、この辺りは考えてほしいなと感じました。

引き続き情報が入り次第お話をしようと思います。

なぜ署名と押印が必要なのか。

2021-05-10

司法書士業務を行っていると、書類に署名押印が必要なことが分かります。

不動産の取引現場では、実印の印影と印鑑証明書を照らし合わせ、実印に間違いがないかをチェックします。

会社の登記でも、代表者を決定する場面などでは実印が要求されており、ここでも印影をチェックします。

このように、司法書士は日常の業務の中で押印が必要なことが多く、「書類には押印が必要」というのは当然の感覚です。

しかしこれは、私たち司法書士が相手にしている法律が、「不動産登記法」であったり、「商業登記法」であったりという「手続法」であることに由来します。

手続き法であるこれらの法律には、法務局へ提出する書類には押印が必要なことが明示されているため、ある意味押印がない書類は意味をなさないのです。

ただ、世の中に多く存在している書類の中には法務局や裁判所、市役所などの役所には提出しないものも多くあります。

これらの役所へ提出しない書類への署名・押印は何のためにしているのでしょうか。

日本の民法では、売買、賃貸借、贈与等々、様々な法律が定められています。

そしてその多くは、「口約束でも成立」します。

書面がなくとも法律的に効果が発生するということです。

しかし、特に大きな金額の契約では契約書へ署名、押印を行うのが一般常識となっています。

この理由は、民事訴訟法に定められているある条文に起因しています。

民事訴訟法第228条第4項

 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」

というものです。

これは、言い換えると、「署名又は押印があれば、本人の意思により作成された書類だと推定する」

ということになります。

つまり、署名又は押印があれば本人には契約意思があるだろうと客観的に判断する資料となるのです。

後々紛争になった場合、この署名や押印を根拠として争うことができるようになるのです。

「じゃあ、署名だけでもいいじゃないか」という声が上がりそうですが、そうではありません。

海外では、サインという文化があり、自分のサイン何度かいても同じであり、他人には簡単にまねできないという事情がありますが、日本はそうではありません。

筆跡鑑定という技術こそあるものの、その日その日で少しずつ署名が変わる人も多くいるのです。

そのため、押印、特に本人しか持ちえない実印での押印をすることにより、本人確認も同時に行っているのです。

これにより、後日「私の署名押印ではない」という言い逃れ防ぐ役割があるのです。

昨今、リモートワークなどでハンコが必要ないという流れになっていますが、この「実印」については当面は必要でしょう。

電子証明書など実印に代わる制度が普及していけばなくなる日もあるのかもしれませんが・・・・

相続放棄してるかどうか

2021-04-30

最近、こんな事例がありました。

・音信不通の兄弟がどうやら亡くなった様子

・亡くなった兄弟には息子がいるが、その甥とも音信不通である。

・素性不明の貸金業者から電話がかかって来た。(おそらく亡くなった兄弟の債権者)

以上のような事例です。

通常、親族が亡くなった場合、第一順位として息子、娘等の子がまず相続人となります。

この場合、亡くなった兄弟には息子がいるため、相続人はその甥っ子というのが基本的な考え方です。

日本の相続では、先順位の相続人がいる場合、後順位の相続人は相続権がありません。

つまりこの場合、相続権は甥がすべて持つため(配偶者が存命であれば配偶者と共に)、兄弟である依頼者は相続に関して悩む必要はありません。

では、どのような場合に兄弟に相続権が来るかというと、先順位者に相続放棄があった場合です。

第一順位の相続人である甥が、被相続人の債務を相続しないために相続放棄をしたとしましょう。

すると、相続権は第二順位である、直系尊属へと移ります。

被相続人よりも年長者である直系尊属は亡くなっていることも多いです。(今回もそうでした。)

そのため、次の第三順位である兄弟姉妹つまり依頼者に相続権が来ることになるのです。

先順位である甥が相続放棄をしていれば、依頼者にも相続放棄が必要というある意味不安定な状態での相談だったのです。

甥っ子に連絡が取れればそれで解決ですが、亡くなった兄弟含めて音信不通。

どうすればいいのか。というのが今回の依頼でした。

 

今回のようなケースでは、「相続放棄申述の有無の照会制度」が利用できます。

この制度は、各添付書類と申請書を家庭裁判所に提出することにより、先順位者が相続放棄を行っているかを照会できる制度です。

今回にぴったりな制度です。

この制度は無関係の他人が利用できる制度ではありません。

申立権利者は、相続人又は利害関係人となります。

今回の依頼者は、まだ相続人ではないため、利害関係人となります。

このように、相続放棄の有無を知る利益を持つものが利害関係人となるのです。

今回の照会で、甥が相続放棄をしていれば、依頼者も相続放棄を。

していなければ相続人ではないことが証明できるわけです。

 

今回の相続放棄の有無の照会制度ですが、私は以前にもしたことがありました。

以前は今回のように相続放棄の前提としてではなく、相続登記の場面でした。

これについては次回以降に書いてみたいと思います。

 

当事務所では、債務整理等の様々な業務を行っています。

司法書士への依頼は、相続及び債務整理であったり、成年後見及び遺言等々、様々な業務が複合してきます。

幅広い業務を行っている司法書士へ依頼することでワンストップの対応を受けることができます。

何かお困りのことがあれば、お気軽にお声掛けください。神戸市以外の方も大歓迎です。

債務整理の期間がかかっています。

2021-04-28

債務整理を行う場合、最初に行う業務は、受任通知の発送及び総債務額の調査です。

通常であれば、この期間は1ヶ月程度で終わるのですが、最近はかなり時間がかかっているように感じます。

2ヶ月連絡がなければ基本的にはこちらからも催促をするのですが、催促をしないといけない業者も増えてきています。

このご時世で、債務整理を司法書士などに依頼することが増えているのか、対応する人を減らさざるを得ないのかは分かりませんが、いずれにせよ、先方の消費者金融などの対応に時間がかかっています。

相続登記であったり、会社の登記等々、司法書士の多くの業務は先方の対応が早ければ早いほど良いです。(当然ですが)

しかし、この債務整理、特にその中でも任意整理の業務については、先方の対応が遅いこともメリットになることがあるのです。

その理由は、任意整理の場合、先方の対応の遅れは「返済開始の遅れ」となるからです。

債務整理を司法書士に依頼した方の多くは、直近の返済の額もできる限り低く抑えたいはずです。

返済開始が遅れることにより、少しでも貯金ができたり、気持ちにも余裕ができることがよくあります。

任意整理の成功率も、返済開始までにどれだけの貯金ができるかで大きく変わってきます。

つまり、消費者金融の対応が遅れている今は、任意整理を依頼するタイミングとしてはチャンスとも言えるのです。

この状況を追い風に変えて、何とか乗り切るサポートをしていきますので、気になった方はご連絡ください。

 

さて、債務整理以外の業務は、法務局、裁判所を始め、各役所の対応にも少しずつ時間がかかっています。

私の業務は、これらの役所に加えて、病院や施設への出入りがあります。

これらの施設は、出入り禁止期間と解禁が繰り返されています。

そうなると、出入りが解禁された時にこれらの施設にまとめて回っています。

そして、まとめて持ち帰った仕事をまとめて各役所へ提出。

僕のような司法書士も多くいるはずなので、役所の業務も偏ってくる。

すると尚更、各役所の業務が遅れていく。。。

本来は、業務量が偏って多くなる時期には、対応する人材も増えるはずですが、当然、今はそれができません。

っというループに入っているのが、司法書士業界の現状です。

いつ完了するのかが中々読めないので、できる限り最短で業務を行なっていくことを心がけています。

どうせ家から出られないなら、相続登記を終わらせたい。会社の定款を整備したいなど、時間がある今に行いたいことがある方は当事務所にご相談ください。

改製不適合物件について

2021-04-26

最近は、不動産登記会社の登記どちらもオンライン申請で行うことがほとんどです。

ただ、不動産登記の一部の業務では書面での申請を行う場合があります。

現在も残っている書面申請のケースは、売主・買主の指定司法書士が分かれている場合によく用いられます。

指定司法書士が分かれている場合でも、復代理という方式を用いればオンライン申請を行うことができるため、司法書士が分かれていても書面での申請はもうしていないという先生も増えてきています。

ただ、例えば売主が権利証(登記識別情報)を紛失している場合。

この場合は、本人確認情報を作成するため、売主代理人が申請する必要があり、それに伴い書面での申請となります。

っと。ここまでが現在も残っている書面申請のパターンです。

しかし、今回は私が売主・買主も代理するケースでしたが、書面での申請しかできないパターンでした。

その理由は、「改製不適合物件」というものでした。

現在の不動産登記簿はそのほぼ全てがコンピュータ上のデータにより保管されています。

ただ、現在もデータ化されておらず、紙の情報で管理されている物件が一部残っているのです。

コンピュータ化されていない物件は、当然オンラインでの申請にも対応していません。

よって書面での申請を求められるということになるのです。

さて、この改製不適合物件。

コンピュータ化されていない、できないのにはいくつか理由があります。

まず一つは、法的に作成が難しいパターン。

・同一不動産に複数の登記簿が作成されてしまっている。

・登記の所在に数個の地番区域の記載がある。

・家屋番号の記載がない。

等、コンピュータ化するために必要な情報が不足している、あるいはどの情報をコンピュータ化すればいいか判断できないといった理由が法的に改製できない理由です。

続いては、コンピュータの形式上、処理上での問題があるパターン。

・紙の登記簿上で判別できない文字があり、データ化ができない。

・共有状態である不動産の持分合計が1にならない。

これらが処理上での問題点です。

今回は恐らく、処理上での問題があったのだと思われます。

しかし、そろそろ便宜上でもコンピュータ化をしていただきたいと感じました。

書面申請では、印紙を購入しなくてはいけなかったり、副本を付けないといけない、法務局に直接行かなければならないなど、無用な手間が増えてしまいます。

また、補正がある場合でもオンラインであれば出したデータが確認できますが、書面ではそれもできません。

とりあえず今回の分は補正のないことを祈っておこうと思います。

次回は具体的に書面申請でのオンラインとの差異についてお話をしようと思います。

成年後見と自宅売却

2021-04-23

本日は、ご担当している成年被後見人さんのご自宅を見に行ってきました。

本人さんは、私が就任した時には既に施設に入所しており、数か月自宅を空けているという状況でした。

司法書士が関与した時点で施設に入っているというケースはかなり多いように感じます。

被後見人さん以外に家族もおらず、自宅に戻る可能性があるような身体的状況ではないので、老朽化する前に処分することを念頭に置いて自宅を見てきたわけです。

そもそも成年後見制度とは、本人が認知症や障害などで意志表示をできなくなったり、できにくくなった時に利用する制度です。

家庭裁判所へ親族や本人が申し立てることにより、成年後見人保佐人補助人)が選任されます。

成年後見人が選任され、審判が確定すると、成年後見人が本人に代わり身上監護や財産管理を行っていくことになります。

さて、今回のようなケースでは、本人に代わって成年後見人が不動産の売却手続きを行っていくことになります。

前述のように、成年後見人は本人に代わって財産管理を行うため、不動産の売却についても基本的には成年後見人が自らの判断で、本人のために行動していくことになります。

ただ、不動産の中でも、本人の住んでいる不動産であったり、施設入所前に住んでいた不動産は特に「居住用不動産」と呼ばれ、その他の不動産とは扱いが変わります。

具体的には、居住用不動産を処分するために「裁判所の許可」が必要となるのです。

理由としてはやはり、居住用不動産が本人のために持つ意味が他の財産と比べて大きいことに由来します。

成年後見人は、本人の財産状況であったり、対象不動産に戻ることができる可能性、一部意思表示ができる方に関しては意向も伺いながら処分の可否を決めていきます。

その上で、対象不動産の処分が相当と判断した場合には、裁判所に対して売却許可の申し立てを行うのです。

その際、申立書と合わせて、買付書であったり、売買契約書、相見積書、鑑定書等を添付しながら、条件面も含めて裁判所と協議を行うのです。

そして許可が出れば実際に売買契約、所有権移転登記等を行い、手続きを進めていくのです。

この許可書には、居住用不動産の売却に法的効果を与える他にも大きな役割があります。

それは登記面です。

成年後見制度を利用している方というのは認知レベルが低下しているため、権利証等の登記に必要な書類を紛失していることが多いです。

しかし、登記には権利証(登記識別情報)が必要です。

権利証がないから手続きが進められないのでは、不動産価値が下がってしまいます。

そこで、裁判所の許可書があれば権利証がなくとも登記ができるという扱いになっているのです。

このように、二つの重要な意味を持つのが、裁判所の許可書です。

今回の案件でも、いずれは同じように進めていくことになりますので、私の知識を整理するためにも今日は書かせていただきました。

今後もプライバシーに注意しながらこの案件についても書いていきたいと思います。

5年以上の任意整理について

2021-04-21

債務整理の代表的手続き方法である「任意整理」。

多くの方は、まずこの任意整理が可能かを検討することになります。

そして、その際に基準となるのが「5年」という年数なのです。

5年という年数を分割回数基準で考えると、60回になります。

つまり、総債務を60で割った金額を毎月返済に回せない方は、基本的には任意整理以外の手続きを検討することになります。

ただ、どうしても任意整理をしないといけない状況の方、破産ができない環境の方は少なからずおられます。

その場合、取りうる選択肢は主に二つです。

一つ目は、とりあえずこのまま返済を続けて、5年以内の返済が可能になった段階で司法書士が介入するパターンです。

しかしこの方法は前提として「自然に債務が減っていく」あるいは「近々まとまったお金が入る予定がある」状況でなければ利用できません。

基本的に多重債務状態で司法書士を探している方は、債務が減らない、債務が増えていく方がほとんどです。

そのためこの方法は基本的に考えられません。

 

では、もう一つの選択肢についてもお話しします。

それは、60回以上の任意整理をまとめるという方法です。

正直、任意整理・債務整理を行なっている司法書士であれば、5年以内の任意整理の結果は大きく変わりません。

ただ、60回以上の交渉は、司法書士の腕次第、相手の担当者次第というところに依存してきます。

例えば、私の事務所であれば、60回以上の分割交渉をまとめたこともありますし、できる限り返済開始を遅らせる交渉も行なっております。

60回を超える分割交渉について、100%まとめると謳っている事務所はないはずですが、確率の高い事務所は必ず存在します。

どうしても破産はできない、したくないという方はホームページなどの情報で信頼できる司法書士を探してみてください。

 

さて、神戸、大阪などの飲食店経営者の方は苦しい時期が続いています。

補助金が入るまで何とかすれば、、、という状況の方もおられるでしょう。

金融機関の借り入れだけではなく、個人の借り入れで何とか繋いでいる場合もあると思います。

やはり、金融機関に比べると、個人での借入は利率も高く、返済が大変です。

利率が高い債務を先に処理していくことが多重債務問題解決の近道です。

この何ヶ月かで返済ができなくなりそう、もうほぼパンクしているという方は1日でも早く司法書士へご連絡ください。

金融機関の債務にも手をつけないといけない場合は、頼りになる弁護士にも責任を持ってお引き継ぎします。

まずは当事務所へご連絡ください。

会社の代表者の相続

2021-04-19

司法書士事務所は、相続に関する業務を受任することが多いのですが、単純な相続登記~株式の承継を含むような複雑なものまで内容は様々です。

今回はその中でも、会社の代表者が亡くなった場合の相続手続きについてお話をしようと思います。

会社の代表者が亡くなった場合、会社の代表者を変更しなければなりません。

通常、大きな会社でなければ、代表者=大株主であることが多いため、この株式の動きが重要になってきます。

例えば、代表者が亡くなり、当時から取締役となっていた長男が事業を引き継ぎたいとしましょう。

相続人としては、その他に役員となっている兄弟が3名、代表者の配偶者が存命であり、当所の株式は全て亡くなった代表者が所有していたパターンを想像してみましょう。

長男が代表者となり、事業を承継していこうとした場合、当然ですが相続人全員の承諾があれば何の問題もなく手続きを進めることができます。

しかし、仮に、長男以外の相続人の足並みが揃わなかったとしたらどうでしょう。

役員の決定や、そもそも会社を継続するかどうかは原則「株主」が決定します。

会社の役員ではありません。

つまり、代表者が持っていた株式がどこに流れるかによって意思決定者が変わるのです。

さて、上記の例のパターンでは、遺言などがない場合、2分の1を配偶者が。残りの半分を兄弟4名つまり各8分の1ずつ兄弟が持つことになります。

よって、兄弟全員が自らを代表者にしたい場合は、株式の議決権が割れてしまい、結果として配偶者の意見に左右されることになってしまうのです。

最悪の場合は、配偶者がどの兄弟に会社を続けてもらいたいかが決められず、会社がストップしてしまうことも十分あり得るのです。

 

では、この場合、どうすれば良かったのでしょうか。

ベストな手段としては、代表者が存命の間から遺言などで株式の流れに差をつけておくことが考えられます。

これにより、会社を引き継ぐ相続人に株式・議決権を集約させることができます。

特に相続人が日本各所、場合によっては海外に分散しているような相続状況であれば遺言書の作成は必須と言えるでしょう。

その他には、さらに一歩進んで、事業承継をあらかじめ行っておくことも考えられます。

具体的な内容は避けますが、事業承継税制であったり、種類株式、家族信託等を用いながら総合的に事業承継を行う選択肢もあります。

ただこれは、司法書士・税理士などの色々な専門家の力を借りる手続きであり、費用も時間もかかります。(当然効果は非常に高いですが。)

そのために、まずは最低限、遺言を用いて株式・議決権の分散を避けるところから始めることをおすすめします。

 

当事務所では、こういった会社法人の代表者様向けの生前財産対策も行っております。

興味がある方は一度ご連絡ください。

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