前回に引き続き、相続財産に含まれる不動産を第三者が使用している場合のお話しをしていこうと思います。
賃貸借の次に多いパターンとしては「使用貸借」が挙げられます。
賃貸借が第三者使用に対価が発生するのに対し、使用貸借は無償で第三者が使用しているのが特徴となります。
基本的には、使用貸借は使用目的・期間を定めて契約を結びますが、そういった決め事をしないで結ばれていることも多いです。
その理由は、使用貸借が多くの場合、親族や友人などの関係の中でよく用いられるものであるからです。
つまり、被相続人である貸主と借主の間は親密な関係であったということがほぼ全てのケースで当てはまるでしょう。
しかし、相続人と借主の間にも親密な関係があるかと言えば必ずしもそうではありません。
そこで、使用貸借の対象である不動産をどのように取り戻したいと思った場合、どのようにすればいいかを解説していこうと思います。
まず、使用貸借の終了事由は民法597条、598条に定められています。箇条書きにすると、
1、期限を定めた場合はその期限の満了
2、目的を定めた場合は、目的に従った使用・収益終了時、若しくは使用・収益に足りる相当期間経過時
3、借主の死亡
4、目的及び期間を定めなかった場合、貸主からの解除
以上です。注目していただきたい点は、貸主の死亡により終了しないということと、貸主は解除をすることができるという点です。
この決まりがあるため、使用貸借は永遠には続きません。
よって、これらの終了事由が生じれば、相続人は目的物の返還を請求することができます。(相続人の過半数で請求可能だと解されています。)
しかし、前述のように、使用貸借は契約書等を作成せずに結ばれていることも多く、目的・期限の定めがあったかどうかで紛争が起こることもあり、この点は注意が必要です。
契約について紛争が起こった場合は専門家への相談を強くお勧めします。
また、使用貸借契約があったと借主が一方的に主張しているが、権限を証明する資料が何もないということもあり得ます。
これが、第三者が不動産を使用しているパターンの最後である、無断使用の場合です。(単に勝手に不動産を使用されている場合も含みます)
その場合は、相続人として、不動産の占有者を無権限者として妨害排除請求をすることも可能です。
無権限者への請求を行う場合は保存行為となり、相続人の過半数の足並みを揃える必要もなく、各相続人が単独で請求を行うことが可能です。
ただし、万が一無権限者が不動産登記を不正に行っていた場合、その所有権移転全てを抹消するには相続人の足並みを揃える必要があるため、司法書士・弁護士に速やかにご相談ください。
以上が第三者が相続不動産を使用している場合の対処法です。特に今回説明したケースは紛争になる場合が多いです。
少しでも疑問がある方は是非お問い合わせください。