第三者が遺産を使っている場合の相続-1(賃貸借・使用貸借・無断使用)

相続対象不動産の中には、被相続人の方が使用していなかったものも当然含まれます。

遺産分割協議が終了し、すぐに遺産を承継する人が決定すればあまり大きな問題とはなりませんが、遺産分割協議が長引くと、その間に発生した問題をどのように解決すべきか悩むことになります。

今回は遺産分割協議が終わる前に発生し得る問題について解説していこうと思います。

第三者が被相続人の不動産を使用している場合、その理由は賃貸借・使用貸借・無断使用の三つが多いでしょう。

まず、賃貸借の場合、以下の問題が発生する可能性があります。

1、賃料債権はどのように請求すればいいか。

2、契約更新をどのようにすればいいか。

3、解約の申し入れがあったらどのようにすればいいか。

4、隣地との境界に紛争が発生した。

 

まず、賃料についてですが、これは当然、相続人間で分けられることになります。

しかし、相続人が複数いる場合、賃借人が相続人それぞれに相続分に応じて賃料を支払うのは負担であり、現実的ではありません。そこで、対応策としては、とりあえず相続人間で代表で賃料を受け取るものを決定し、賃借人に通知しましょう。

この時の注意点としては、あくまで遺産分割協議が整うまでの仮の全額受領であるため、他の財産と混じらないように管理しておくことが必要です。

 

次は、契約の更新についてです。これは対象不動産の種類と契約期間によって扱いが変わります。

賃貸借契約には「短期賃貸借」というものがあり、この短期賃貸借に当てはまる賃貸借は「管理行為」という扱いになります。

具体的には、

一 樹木の植栽又は伐採を目的とする山林の賃貸借 10年
二 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 5年
三 建物の賃貸借 3年
四 動産の賃貸借 6か月

とされており、この期間内の賃貸借であれば、管理行為と扱われます。(民法の改正により、これを超える期間であれば、この期間に短縮されます。)

また、この管理行為という扱いになれば、相続人は過半数の意思決定でこれを行うことができます。

結論を言うと、更新については、相続人の過半数の意思決定により行うことができるのです。(賃料の変更についても管理行為であるため同様)

逆に、居住用不動産を建てるために、相続財産に含まれる土地を新たに貸す場合は、管理行為に当たらず、相続人全員の意思決定が必要となります。

このように財産の性質を大きく変えてしまう行為を変更行為と言います

 

続いて、解約の申し入れについても管理行為という扱いになり、結論は更新と同じです。

 

最後に、境界で紛争があった場合ですが、これまでの流れを考えるとお分かりの方もおられるかと思います。

相続財産を管理する行為ならば、過半数。

相続財産を変更する行為であれば、全員の意思決定。

これが大きな考え方なので、境界の紛争を解決し、境界を確定させる行動は「変更行為」に当たります。

つまり相続人全員で行う必要があります。しかし、どうしても参加しない相続人がいる場合は、その相続人も「被告」という扱いにし、法的手続きをすることが可能です。

 

以上が相続財産を他人が使用しているケースで一番多い、賃貸借の場合の論点です。

残りの使用貸借等については後日またお話ししていこうと思います。

 

 

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