司法書士は、全士業の中で一番成年後見を受任しています。
ここ神戸でも、家庭裁判所から多くの司法書士が選任を受けています。
成年後見を多く受任しているということは、被後見人の死とも多く関わってきたということが言えるでしょう。
成年後見とは、被後見人の財産管理を選任されてから死亡(或いは認知症が治るまで)まで続けることになります。
それは、成年後見人が被後見人の代理人であるからです。
代理とは、代理される本人が生きている間しか代理権を持つことができません。
つまり、本人が死亡すると当然に代理権を失うのが成年後見人なのです。
しかしながら、本人が死亡するとそれに付随する事務であったり財産を承継する必要が出てきます。
にもかかわらず、成年後見人には代理権がありません。
となるとこれらの事務は誰がどのように処理していくのでしょうか。
その答えは、基本的には「相続人」となります。
相続人は亡くなった本人の権利義務を全て承継するため付随義務も当然相続人が処理していくことになります。
ただ、成年後見を利用している方は、相続人がいなかったりあるいは関係性が薄いという状況であることも多く、相続人の協力が得られるとは限りません。
相続人がいないと、死後の緊急の事務を行う権限のある人がいなくなってしまうのです。
こんな時のために成年後見人には、緊急の対応権限が発生する場合があります。
法的根拠となるのは、「事務管理」と「応急処分義務」です。
まずは、民法697条の事務管理。
義務無く他人のために事務の管理を始めた者は、その事務の性質に伴い、最も本人の利益に適合する方法によってその事務の管理をしなければならない。
というものです。抽象的な権限ですが、「他人のために」「権限無く」事務が開始されうることを想定した条文となっており、本人が亡くなった後のやむ負えない事務はこれが根拠となります。
ただやはり、抽象的な表現であるため、どこまでしてもよいのかということがあいまいになってしまいます。
そうなると後見人をしていた司法書士を始めとする専門家は、「できる限り何もしないこと」を選択してしまいます。
そこで、もう一つの根拠となる応急処分義務では、
・相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為
・相続財産に属する債務の弁済
・その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(この項目については家庭裁判所の許可が必要)
この書きぶりであれば、最低限どこまでやっていいのかが分かりやすくなります。
司法書士は、相続人がいない本人が亡くなった場合、これらの規定に従い事務を処理していくのです。
ただ、やはりそれでも相続人の協力がなければ私たちができることはあくまで最低限の部分に過ぎません。
ではどうすればいいのか。
現状は、認知症になる前に、「死後事務等委任契約」を結ぶ他ありません。
自分が死んだ後、周囲に迷惑を掛けたくない、死んだ後のことまで自分で決めたいという方は是非お元気なうちに司法書士へ相談しましょう。
当事務所でも、任意後見・死後事務委任を含めた複数の制度を利用し、理想的な終活をご提案しています。
気になった方は是非無料相談をご利用ください。