年度末ということで、不動産の取引に関する業務が増えています。
不動産決済業務に関して、私たち司法書士が一番恐れているのは、住所変更登記の見落としです。
その理由をお話しします。
登記を申請する際、申請しなければならないものが以下のようなものだったとします。
・住所変更
・抵当権抹消
・所有権移転
・抵当権設定
この場合には、登記を4件申請します。
あってはならないことなのですが、司法書士が登記申請を行って、補正があることがあります。
一部住所の記載が間違っていたり、申請内容に疑義があったりすると法務局から電話があり、補正を行います。
正直、補正にもならず却下になる事象は多くありません。
ただ、最初にお話ししたように、住所の変更を見落とした場合、補正では対応ができません。
なぜなら、住所変更登記の見落としは、登記内容の補正ではなく、登記申請件数そのものが間違ってるからです。
「忘れていたなら後から出せばいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、そうはいきません。
登記申請をすると、受付番号というものが発行されるのです。
これは、登記を申請した順に「令和3年3月17日受付第12345号」のように受付番号が付与されるのです。
そして申請情報の処理は受付番号の若い順に処理がされていきます。
つまり、本来最初に処理しなければならない住所変更登記を後から申請しても意味がないのです。
次に、「そもそも住所変更登記はなぜ必要なの?」と思われる方もおられると思います。
この理由は、印鑑証明書と関係があります。
所有権移転登記を申請する際、売主は印鑑証明書を提供します。
そしてこの印鑑証明書は「現在の住所」について発行されます。
つまり、住所変更登記を経て、最新の住所に変更していなければ提供した印鑑証明と登記簿上の住所が一致しません。
本人確認としての意味が失われてしまうのです。
このため、住所変更は必ず所有権移転登記の前に申請しなければならないのです。
よって、住所変更を漏らしてしまうと、基本的に登記を取り下げるしかありません。(裏技はあるようですが、、、)
最後に、「取り下げてもう一度出せばいいじゃないか」と思われる方について。
これはある意味では正しいです。
しかし、曜日が変わってしまうと問題があります。
金融機関で住宅ローンがあれば、一日無担保の期間ができてしまいます。
これは司法書士の責任問題となるのです。
そして、住所変更を漏らした場合、発覚するのは数日後です。
つまり曜日は基本的に遅れてしまうのです。
よって、住所変更に気づかず申請をした時点で責任問題となります。
運よく当職はまだ経験がないので、この記事を書くことでもう一度気を引き締めたいと思います。
当事務所では、登記申請の依頼だけでなく、ご自身で登記される方の無料相談も実施しています。
もし、登記申請でお困りの方がおられたらお気軽にお声がけください。