私は現在、法定後見の案件を多く手掛けております。
法定後見とは、認知症や精神上の障害により判断能力が少なくとも不十分な方のサポートを行う人を家庭裁判所が選任する制度のことです。
この法定後見制度には当然大きなメリットがあります。
認知症の方が契約が締結できなかったり、金銭管理ができない場合にそれらを補うことができます。
これにより、金銭の紛失や使途不明金の減少、施設の入所契約がスムーズにできるため本人さんにとってはメリットが多くあります。
ただやはり、融通の利かない所があります。
それを補うために任意後見があるのですが、実はこの任意後見と法定後見は同時併用ができません。
理由としては、任意後見人と法定後見人が行うことが被ってしまうためです。
ではどちらも使わなければならない時、例えば「任意後見を発動していたが、予期しない事由が起こり、任意後見だけではサポートしきれなくなった」場合はどうなるか。
この場合、任意後見を終了して法定後見へ移行する他ありません。
しかし、本人の最後の意思表現となり得る任意後見が簡単に終了してしまっては制度の意味がありません。
そこで裁判所の運用としては、任意後見契約を締結している場合には「本人の利益のため特に必要があるときに限り後見等の審判を行うことができる」としており、出来る限り任意後見を優先する運用を行っています。
この運用は、「任意後見は基本的には、終了せざるを得ない状況が発生しないように」考えなければなりません。
そうです、法定後見人を選ぶ(最終的には裁判所が選任しますが)時よりも任意後見人を選ぶ方が慎重にならなければなりません。
法定後見への移行はあくまで最終手段です。
ただ、逆に言うと「任意後見契約をしたから、どんな不都合が起こっても一生任意後見に従うしかない」ということもないのです。
聞き取り内容、財産の全容、家族構成、相続人間の関係性等々、契約締結時にできる限りの要素を勘案し任意後見契約書を作成しております。
それでも不測の事態というのは発生し得るものです。
事故であったり、天災、家族構成の変更等々、これらはどんなに対策してもあり得るのです。
そんな時に任意後見契約内容を変更できる段階であればそうすればいいですし、既に認知症状態であれば法定後見への移行も可能です。
いずれにせよ、現段階でのベストな対策をするのが任意後見の役割です。
将来の絵を描ける司法書士に相談し、将来の不安を少しでもなくしましょう。