Archive for the ‘相続’ Category
無料相談について
現在、兵庫県司法書士会では、無料相談を電話にて毎週火曜日・金曜日、午後1時から4時までの3時間行っています。(この社会情勢のため当面は電話にて開催)
私もこの電話相談に相談員として何度か参加しています。
先日も担当が回ってきたので、業務にあたっていました。
毎回、実に様々な相談がありますが、やはり「相続登記」「相続放棄」など相続に関する相談がいつも多いように感じます。
詳しい相談内容については、当然ここでは言うことができませんが、相続登記の必要書類を聞かれたり、単に司法書士を紹介してほしいというものが多いです。
司法書士の紹介であれば、問題なく速やかに対応ができるのですが、必要書類を聞かれたり、解決策を聞かれたときはそうはいきません。
状況の聞き取り、現在取得済みの書類の確認、法定相続人の確認等、電話で全てを聞き取っていくのはかなりの時間がかかります。
相談時間が無制限であれば、ゆっくりと丁寧に聞き取ればいいのですが、この相談会は原則20分と決まっており、余裕がありません。
週二回、一回3時間の開催であるため、他の相談者も多数いらっしゃるので仕方がありません。(実際、電話を切ればすぐに次がかかってくる状況です。)
そこで、もし今後このような無料相談を利用しようとしている方へ、アドバイスをしようと思います。
現在、兵庫県司法書士会に限らず、多くの相談会は電話などの非対面での形になっているはずのなので、そういったところを利用する方もご参考になさってください。
非対面式での相談でにおいて、一番時間がかかってしまうのはやはり聞き取りです。
対面式であれば、戸籍を一緒に見ながら話をすることができますが、電話では、相談者の方が発する言葉がすべての情報となります。
よって、相談員が欲しい情報を紙に書き起こしておくことでスムーズに情報を伝達することができます。
例えば、相続登記の場合、相談員が欲しい情報は以下の通りです。
1、誰がいつ亡くなったか(相談者との関係及び死亡日)
2、相続人は誰か(子供は居たか、両親は存命か等)
3、遺言書はあるか
4、遺産分割はまとまっているか
5、対象物件はどこか
大体、この程度の情報を伝えると、必要書類などのアドバイスは適切にしてくれるはずです。
スムーズに情報を伝えることができれば、この20分という時間でも十分に満足いく答えが得られるはずです。
また、このような公の相談会でなくとも、無料相談を行っている事務所は意外と多くあります。
実際、私の事務所でも無料相談を行っており、特に制限時間は設けておりません。
このご時世ですが、ご要望があればご自宅等にも無料で伺いますので、そもそもどう相談していいか分からないという方は、是非ご連絡くださいませ。
第三者が遺産を使っている場合の相続-2(賃貸借・使用貸借・無断使用)
前回に引き続き、相続財産に含まれる不動産を第三者が使用している場合のお話しをしていこうと思います。
賃貸借の次に多いパターンとしては「使用貸借」が挙げられます。
賃貸借が第三者使用に対価が発生するのに対し、使用貸借は無償で第三者が使用しているのが特徴となります。
基本的には、使用貸借は使用目的・期間を定めて契約を結びますが、そういった決め事をしないで結ばれていることも多いです。
その理由は、使用貸借が多くの場合、親族や友人などの関係の中でよく用いられるものであるからです。
つまり、被相続人である貸主と借主の間は親密な関係であったということがほぼ全てのケースで当てはまるでしょう。
しかし、相続人と借主の間にも親密な関係があるかと言えば必ずしもそうではありません。
そこで、使用貸借の対象である不動産をどのように取り戻したいと思った場合、どのようにすればいいかを解説していこうと思います。
まず、使用貸借の終了事由は民法597条、598条に定められています。箇条書きにすると、
1、期限を定めた場合はその期限の満了
2、目的を定めた場合は、目的に従った使用・収益終了時、若しくは使用・収益に足りる相当期間経過時
3、借主の死亡
4、目的及び期間を定めなかった場合、貸主からの解除
以上です。注目していただきたい点は、貸主の死亡により終了しないということと、貸主は解除をすることができるという点です。
この決まりがあるため、使用貸借は永遠には続きません。
よって、これらの終了事由が生じれば、相続人は目的物の返還を請求することができます。(相続人の過半数で請求可能だと解されています。)
しかし、前述のように、使用貸借は契約書等を作成せずに結ばれていることも多く、目的・期限の定めがあったかどうかで紛争が起こることもあり、この点は注意が必要です。
契約について紛争が起こった場合は専門家への相談を強くお勧めします。
また、使用貸借契約があったと借主が一方的に主張しているが、権限を証明する資料が何もないということもあり得ます。
これが、第三者が不動産を使用しているパターンの最後である、無断使用の場合です。(単に勝手に不動産を使用されている場合も含みます)
その場合は、相続人として、不動産の占有者を無権限者として妨害排除請求をすることも可能です。
無権限者への請求を行う場合は保存行為となり、相続人の過半数の足並みを揃える必要もなく、各相続人が単独で請求を行うことが可能です。
ただし、万が一無権限者が不動産登記を不正に行っていた場合、その所有権移転全てを抹消するには相続人の足並みを揃える必要があるため、司法書士・弁護士に速やかにご相談ください。
以上が第三者が相続不動産を使用している場合の対処法です。特に今回説明したケースは紛争になる場合が多いです。
少しでも疑問がある方は是非お問い合わせください。
第三者が遺産を使っている場合の相続-1(賃貸借・使用貸借・無断使用)
相続対象不動産の中には、被相続人の方が使用していなかったものも当然含まれます。
遺産分割協議が終了し、すぐに遺産を承継する人が決定すればあまり大きな問題とはなりませんが、遺産分割協議が長引くと、その間に発生した問題をどのように解決すべきか悩むことになります。
今回は遺産分割協議が終わる前に発生し得る問題について解説していこうと思います。
第三者が被相続人の不動産を使用している場合、その理由は賃貸借・使用貸借・無断使用の三つが多いでしょう。
まず、賃貸借の場合、以下の問題が発生する可能性があります。
1、賃料債権はどのように請求すればいいか。
2、契約更新をどのようにすればいいか。
3、解約の申し入れがあったらどのようにすればいいか。
4、隣地との境界に紛争が発生した。
まず、賃料についてですが、これは当然、相続人間で分けられることになります。
しかし、相続人が複数いる場合、賃借人が相続人それぞれに相続分に応じて賃料を支払うのは負担であり、現実的ではありません。そこで、対応策としては、とりあえず相続人間で代表で賃料を受け取るものを決定し、賃借人に通知しましょう。
この時の注意点としては、あくまで遺産分割協議が整うまでの仮の全額受領であるため、他の財産と混じらないように管理しておくことが必要です。
次は、契約の更新についてです。これは対象不動産の種類と契約期間によって扱いが変わります。
賃貸借契約には「短期賃貸借」というものがあり、この短期賃貸借に当てはまる賃貸借は「管理行為」という扱いになります。
具体的には、
一 樹木の植栽又は伐採を目的とする山林の賃貸借 10年
二 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 5年
三 建物の賃貸借 3年
四 動産の賃貸借 6か月
とされており、この期間内の賃貸借であれば、管理行為と扱われます。(民法の改正により、これを超える期間であれば、この期間に短縮されます。)
また、この管理行為という扱いになれば、相続人は過半数の意思決定でこれを行うことができます。
結論を言うと、更新については、相続人の過半数の意思決定により行うことができるのです。(賃料の変更についても管理行為であるため同様)
逆に、居住用不動産を建てるために、相続財産に含まれる土地を新たに貸す場合は、管理行為に当たらず、相続人全員の意思決定が必要となります。
このように財産の性質を大きく変えてしまう行為を変更行為と言います
続いて、解約の申し入れについても管理行為という扱いになり、結論は更新と同じです。
最後に、境界で紛争があった場合ですが、これまでの流れを考えるとお分かりの方もおられるかと思います。
相続財産を管理する行為ならば、過半数。
相続財産を変更する行為であれば、全員の意思決定。
これが大きな考え方なので、境界の紛争を解決し、境界を確定させる行動は「変更行為」に当たります。
つまり相続人全員で行う必要があります。しかし、どうしても参加しない相続人がいる場合は、その相続人も「被告」という扱いにし、法的手続きをすることが可能です。
以上が相続財産を他人が使用しているケースで一番多い、賃貸借の場合の論点です。
残りの使用貸借等については後日またお話ししていこうと思います。
印鑑証明が取れない??~相続人が海外に住んでいる場合~
昔と比べ、海外が身近になった現代では、相続人の一部の方が海外に住んでいるというケースもかなり増えてきました。
日本は「ハンコ文化」であるとよく言われます。
段々と脱却が図られている業界もあるようですが、私たち司法書士が相手にしている不動産登記の世界はまだまだこのハンコ文化から脱却できそうにありません。
このハンコ文化が足を引っ張る場面はいくつかありますが、特に面倒なのは相続登記の場面です。
相続登記を遺産分割協議書を用いて行う場合、「相続人全員の実印+印鑑証明書」の添付が必要となりますが、相続人の中に海外在住の方がいると、この印鑑証明書の提供ができません。
そうすると、「印鑑証明書に代わる公的証明書」が必要となります。
海外在住者の在住国にも拠りますが、その場合、「サイン証明書」若しくは「サイン拇印証明書」というものが印鑑証明書の代わりに用いられることになります。
これらの証明書の取得方法は以下のようになります。
1、海外在住の方へ郵送で遺産分割協議書等の書類を送る。
2、海外在住の方がそれを持って、日本領事館・日本大使館へ行く。(要事前予約)
3、係員の前で署名及び拇印を押し、本人のものであることを示す証明書を発行してもらう。(手数料は1700円程度)
持ち物は領事館・大使館ごとに若干異なるようですが、パスポートと住所を示す資料であることが多いようです。
そして領事館等で取得した書類を日本へ送り返し、それをもって登記を申請するという流れになります。
当然ですが、相続人が全員日本にいる場合に比べ時間がかなりかかってしまいます。
後に不動産の売却等がある場合は、期間に注意して速やかに手続きを進めましょう。
また、相続登記には「在留証明書」も必要となる場合があり、これも同じく大使館・領事館での発行となるのですが、本籍地入りで発行する場合、戸籍謄本が必要となる点が注意事項です。
スムーズに進めるためには、サイン証明書を発行するために書類を郵送する際に戸籍謄本も一緒に郵送しておくことが必要です。
当事務所では、海外在住の方を含んだ相続案件も多くの経験があります。特に、相続手続きを急がなければいけない方は是非お問い合わせください。
一度書いた遺言って書き直せるの?
遺言を書くことに抵抗がある方の中には、「今、どのように相続させたいかは決まっているが、将来的にはどうしたいそこまで考えていない。」という方も多いのではないでしょうか。
確かに、自分の最後の意思表示である遺言を軽い気持ちで作るべきではありません。
しかし、特に相続人間での紛争が起こる可能性がある場合、最も避けなければいけないのは、遺言等を残さずにこの世を去ることなのです。
基本的に、遺言さえあれば、相続人は遺言にしたがって財産を相続します。つまり、遺言を遺すことは、相続人間での不要な紛争を未然に防ぐことを意味するのです。
では、今回は、「一度書いた遺言の撤回・変更」についてお話しようと思います。
遺言は、撤回や変更が想定されたもの。そう考えることができれば、少しでも遺言を作ることへのハードルが低くなると思います。
遺言の撤回は民法1022~1024条にその方法が示されています。
まず、1024条に「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。」とあります。
この「遺言の方式」というのは、自筆証書遺言・公正証書遺言等の遺言の方式を指します。しかし、公正証書遺言で作成した遺言を自筆証書遺言で撤回することも、その逆も可能だとされています。
つまり、遺言者は、遺言を遺した方式に縛られず、どの方法でも遺言を撤回・変更することが可能となります。
具体的に、撤回する旨の遺言を作る場合は以下のような文言になるでしょう。
「遺言者〇〇は、令和〇年〇月〇日、自筆証書遺言により下記財産を長男〇〇に相続させる旨の遺言をしたが、本遺言書をもってそれを撤回し、下記財産は次男〇〇に相続させる。
財産目録 〇〇銀行普通預金・・・・」
これが一番シンプルな遺言の撤回方法です。
また、このように「撤回」の文言が明示されなくとも、民法1023条により、後の遺言と先の遺言が矛盾する場合は後の遺言が優先されます。
つまり、先ほどの例で、
「遺言者〇〇は、下記財産は全て次男〇〇に相続させる。
財産目録 〇〇銀行普通預金・・・・」
としただけでも、長男への相続させる意思は撤回されたものとみなされ、次男が相続することとなります。これが撤回・変更方法の二つ目です。
最後の方式は主に自筆証書遺言でイメージしやすい方式です。
民法1024条は、「遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。」
とあり、つまり遺言書を故意に破り捨てたり、燃やしたりすれば遺言は撤回されることになります。これが最後の方式です。
このように遺言には元々様々な方式での撤回・変更が予定されています。つまり、「現状の」意思表示をするものが遺言なのです。
遺言の作成は、これから義務に近いものとして認識されてくるでしょう。将来起こるかもしれない相続人間での無用な紛争を避けるためにも是非遺言を遺すことを早めに考えましょう。
遺言の作成はもちろん、遺言の撤回・変更についても是非ご相談ください。
意外と短い??相続におけるタイムスケジュール
相続が発生した場合には、いくつか意識しなければならない期限があります。
期限の早いものから順に、「相続放棄の熟慮期間」、「準確定申告の提出期限」、「相続税の申告期限」です。
この期限はそれぞれ、3か月、4か月、10か月となっています。
これらの期限があるため、よく「相続登記はいつまでにしないといけないのですか?」といった問い合わせがありますが、相続登記そのものについては今のところいつまでにしなければならないという期限は設けられていません。
しかし、上記の三つの期限は相続登記とは別に迫ってきますので、できる限り早急に手続きを行う必要があります。
まず最初に訪れる期限は3か月の「相続放棄の熟慮期間」です。この期限内に相続人がしなくてはいけないことは「相続人の確定」「相続財産(債務)の調査」「相続放棄を行うかどうかの決定」です。
詳しい手続きについては当HP内に記載しておりますが、相続手続きにおいて一番意識しないといけないのはこの3か月という期間です。
なぜかというと、この期間に手続きをしなければ、たとえ望まない場合であっても相続人となる可能性が高まってしまい、多額の債務を抱えてしまうことも考えられるからです。
また、この期間は家庭裁判所で手続きすることで延長することもできます。じっくりと時間をかけ、自分にとって相続する方がいいのか悪いのかを精査するようにしましょう。
次の期間は4か月の「準確定申告の提出期限」です。
この期間は全ての相続において意識するものではなく、「被相続人が確定申告を行う必要があった場合」に意識する期間です。被相続人が事業をやっていた、賃貸不動産を持っていた等の場合はこの期間も意識する必要があります。
最後は10か月の相続税の申告期間です。
この期間は、相続財産の評価、各種税制上の特例を調査、そして遺産分割協議等を行った結果として確定した相続税を申告・納付するための期間です。
当然、10か月の間に遺産分割協議がまとまらないケースも多いですが、その場合でもこの期間内に申告を行う必要があります。(その場合は、法定持分での相続があったものとして申告し、後に更正)
一つ注意点としては、遺産分割協議がまとまっていなかった場合は、相続税算定のため各種税制上の特例が使えない場合が多いため、一時的に多額の相続税を納付しなければなりません。
つまり、遺産分割協議は10か月以内に終えておく方が金銭的な負担も少なくなると言えます。
以上が相続において意識すべき期間です。皆様参考になさってください。
追記として、前述のように相続登記自体はこれらの期間に拘束されずいつでも行うことができます。
しかし、この3か月、4か月、10か月のタイムスケジュールをこなしていれば、通常は「相続登記が行える」状態になっています。しかし、登記を行えるのに行わなかった結果、さらなる相続が発生してしまい、いつまでも相続手続きが終わらないことも多々あります。
相続登記だけを放置するのはあまりにもったいないので、もしそのような状況である方は一度お声掛けください。
改正相続法について②~自筆証書遺言の方式緩和~
遺言の方法としてよく用いられるのは「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」です。
本来、遺言とは、遺言書の全文を遺言者自身が自書する「自筆証書遺言」という形式が原則であったはずです。
しかし、現在は多くの場合、「公正証書遺言」が用いられるようになっています。
その理由はいくつかありますが、まず、様式面での縛りが大きいことが挙げられます。自筆証書遺言に関する民法の条文は第968条です。
第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
(3 加除変更方法について)省略
ちなみに、この第968条2項が今回の改正により新設された部分です。以前はこの条文がなかったため、相続財産が多岐にわたる場合であっても全ての財産を自書する必要があったのです。
つまり、相続財産が多岐に渡る方はこの時点で自筆証書遺言による遺言方法を敬遠していたのです。
しかし、今回の改正により、相続財産のリストをワープロ等で作成することが可能となりました。これは自筆証書遺言を遺言の選択肢とする上で大きな改正と言えるでしょう。
少し話は変わりますが、公正証書遺言による場合、公証人に支払う手数料は相続財産の額によって決まります。つまり、相続財産が多岐に渡る方が公正証書遺言により遺言を作成した場合は、手続き費用が高額になってしまう可能性が高いのです。
今回の改正により、自筆証書により遺言書を作成した場合は当然ですが費用はかかりません。
また、自筆証書遺言によった場合、問題となるのは、様式面だけではなく、保管方法やその後の検認といったものもあります。
しかし、この部分についても今回の改正により、「法務局での遺言書保管制度」がこの令和2年7月より開始されます。この制度を使えばこれらの問題も解消されます。
つまり、今回説明しました様式上の緩和と合わせると、公正証書遺言と同じような効果をより簡単に、廉価に行うことができる可能性があります。
当事務所では、従来の「公正証書遺言」はもちろん、今回改正のあった最新の方法での「自筆証書遺言」もサポートしています。
自分にはどの方法があっているのか、お問い合わせだけでも結構です。是非お声掛けください。
事実婚夫婦の財産はどうなるの?
現在、日本において、離婚件数は結婚件数の約3分の1になっているそうです。
よく巷では「離婚率30%」とか「3組に一組は離婚している」などと言われますが、結婚数に比しての離婚数が約3割というだけなので、正確ではありません。
しかし、これらの統計から「必ずしも結婚を必要としないカップル」が増加しているのはおそらく間違いないでしょう。
例えば、お互い離婚し、すでに子供たちは独立しており、このまま老後を一人で過ごすのは寂しいので一緒に住んでいるカップル等が考えられます。
この場合、仮に婚姻関係を結ぶと、お互いの財産を相続する際にすでにいる子供たちとの相続関係が複雑になってしまいます。
当事者の意向としては、「お互いの財産を一緒に暮らしている間は使っていき、死亡後は子供たちに財産を遺してあげたい。でも、パートナーと同時に死ぬことは基本的にはないので、パートナーが生きていくのに不自由ない程度のお金は残して死にたい。また、自分が認知症になった場合の財産管理はパートナーに任せたい。」このようなことを思い浮かべることが多いでしょう。
この時点で、権利の動きとしては非常に複雑です。
婚姻関係を結んでしまえば、シンプルな動きにはなりますが、自分の財産がパートナーの子供にも流れていくことになり、死亡した順番により財産の動きが全く変わってしまいます。またパートナーの子供に財産が流れていくこと自体わざわざ望む方は少ないと思います。
そこで、信託を利用することで意向通りの財産承継を実現することが可能となります。
お互い自分の財産を、「子供に遺す部分」と「パートナーに遺す部分」に分けてそれぞれ遺したい相手と信託契約を結びます。それにより、相続発生前から財産を分けることが可能となります。
また、相続前から信託契約をすることにより、認知症によって財産が凍結することもありません。
信託契約の詳しい説明はここではしませんが、信託は、事実婚等の本来相続関係にはないカップルを救う可能性があります。
当事務所は、この他にも様々な関係性の信託契約に精通しております。「このままだと自分の財産はどうなるのか」といった問い合わせからでも構いません。是非お気軽にお問い合わせください。
改正相続法について①~配偶者居住権~
平成30年に成立し、段階的に施行がされている改正相続法ですが、この4月より配偶者居住権というものが認められることとなりました。
この配偶者居住権とは、夫若しくは妻に先立たれた生存配偶者が「わが家」に住み続けることができるための権利です。
今回の改正では、終身もしくは一定期間居住するための配偶者居住権と、遺産分割協議がまとまるまでの配偶者短期居住権の二つが認められました。その中で今回は、大きな改正となった通常の配偶者居住権についてお話していきます。
現在、相続が発生した多くの場合で、持ち家は夫婦どちらかの単独所有となっていることが多いです。そして、単独所有者が遺言を遺さずに死亡した場合、当然ですが持ち家は相続財産となります。
相続財産が持ち家だけではなく、多額の預金がある場合は問題にはならないかもしれませんが、相続財産の中で一番財産価値のあるものが持ち家というケースは少なくありません。
そうなると、相続人間で持ち家をどのように相続し、処分していくかは当然大きな問題となります。
従来の民法上では、生存配偶者がわが家に住み続けるためには、自分自身で所有権を取得するか、他の相続人が取得した家屋に使用貸借という形で住み続けるしか方法はありませんでした。
しかし、前者の方法であれば、相続の状況によっては生存配偶者の死亡の際に新たな相続人が発生することも考えられますし(生存配偶者に前婚の子がいた場合等)、手続き上相続手続きが2回発生することになります。また後者の方法であれば、所有権を取得を取得した相続人の財産状況が悪化した場合に、売却される可能性も0ではなく、生存配偶者の権利が不安定なものとなってしまいます。
しかし、今回の改正により配偶者居住権が認められることになり、生存配偶者の居住権が所有権とは別に発生することになりました。
つまり、遺産分割の際に、配偶者ではなく、子ども等の年少者に所有権を取得させつつ、生存配偶者には居住権を与えるという相続が可能となったのです。
また、この配偶者居住権は登記することが可能であり、第三者に対応することも可能となるので、配偶者の権利は安定した権利となります。
当然、このような強い権利として認められるため、無条件に発生するものではありません。条件は、生存配偶者が①被相続人の財産である建物に②相続発生時に③無償で④居住していたことが前提条件となります。
この条件が整っている場合、遺産分割または遺言により配偶者居住権が発生します。(その他、家庭裁判所への請求による審判によっても発生する可能性があります)
以上が配偶者居住権の概要です。これだけを見ると、メリット等についてはピンとこない方も多いと思います。しかし、所有権と使用権を分けて相続することが可能になったということは、これからの相続方法に多様な選択肢を与えることを意味します。実際に遺産分割をしなければいけない状況である方、遺言をそろそろ書こうと思っている方は是非参考になさってください。
私自身も、記事を書く中で、これまで以上に柔軟な提案をしていける専門家になるべく日々研鑽に励もうと思った次第であります。
放置しないで!新型コロナにおける相続放棄の怖い話
今回は新型コロナ渦における相続放棄についてお話しします。相続放棄は相続が開始したことを知ってから3か月以内に行わないといけない手続きです。しかし、新型コロナが猛威を振るっている現在、各役所・金融機関を渡り歩き財産調査、相続放棄手続きをすることは難しいです。そういった方は今回の記事を参考に、今できることを一度考えてみてはいかがでしょうか。
通常、相続放棄を行う場合、法で定められた3か月以内の間に被相続人の財産と負債を調査します。そして、負債が上回っている場合に相続放棄を選択するというのが基本的な流れとなります。しかし、先述のように現在、各役所・金融機関等に出向いて情報を集めるのが非常に困難な状況です。また、金融機関等の対応も通常時と比べかなり時間がかかっているようです。そうなると、3か月以内に相続放棄をするかの判断をすることができないという状況に陥る方も多く出てくるはずです。
そこで、取り得る選択肢は「熟慮期間の延長」という制度です。この制度を使えば、3か月の期間を延長することができます。本来この制度は、被相続人の財産が様々な地に分散していたり、被相続人と疎遠だったため財産調査に時間がかかるといった場合に利用されていましたが、今回のコロナ感染症に関連し、法務省のホームページ上でもこの制度を利用することができる旨が紹介されています。
「3か月を過ぎても相続放棄ができると聞いた」という方もおられると思いますが、それは、「3か月を過ぎてから相続が始まったことを知った」場合であり、「相続があったことは知っていたが、コロナのせいで手続きができなかった」場合ではありません。せっかくコロナ渦が収まったのに、被相続人の多額の借金を背負っていたという恐ろしい展開にならないように、自分の身は自分で守っていきましょう。
当然、このような状況ですので、特別法などで事後的に救済がなされる可能性はありますが、現在自分の身を守る方法として今回紹介したような制度は既にあります。自分は大丈夫か、どうすればいいのか、不安に思った方は是非ご相談ください。
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