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債務整理と司法書士~司法書士は債務整理の専門家~③
前回に引き続き、債務整理業務と司法書士の関りについてお話していきます。今回で最終回です。
前回は、司法書士が簡易裁判所の代理権を取得するまでをご説明しました。
司法書士が簡易裁判所の代理権を取得したことに加え、この平成14~15年以降、さらに債務者にとって有利な流れとなりました。
平成15年~16年、最高裁で画期的な判決が出されたのです。
それは「みなし弁済」というものが事実上認められないことを示すものでした。
詳しい説明はしませんが、これによりグレーゾーン金利がなくなり、法外な利率での借金が減少していったのです。
それどころか、「過払い金」が発生する債務者も多く、これは貸金業者にとっては大きな逆風となりました。
この過払い金の発生により、司法書士・弁護士業界はかなり潤うことになり、過払い金に特化した事務所まで登場するようになりました。
しかし、この過払い金は理論上、永遠に発生する業務ではありません。当然このバブルは終わりを告げ、過払い金に特化した多くの事務所は姿を消すことになります。
この過払い金バブルには、良い点も悪い点もありました。良い点は、「法律の専門家」として司法書士が社会的により認知されるようになったという点。
逆に悪い点は債務者の生活再建よりも、利益率の高い業務に特化した事務所が多くなってしまい、「簡裁代理権=過払い金」のようになってしまった点です。
これまでの全3回で述べてきたように、司法書士が簡易裁判所の代理権を得るまでの道のりは、常に債務者の生活再建と共にありました。
事実、過払い金の請求業務はほぼ姿を消しており、本来の債務整理業務がほぼ100%になっています。
過払い金バブル時のみ、簡裁業務を行い、債務整理を行っていない司法書士も多く、それは専門家としてふさわしくないと思います。
専門家をお探しの時は、是非、利益率の良い任意整理・過払い金だけを行う事務所ではなく、「破産」「個人再生」等の手段から総合的に手続きを選択してくれる事務所を選んでください。
最後に、現在多い債務整理のパターンをお話ししたいと思います。
これまで述べたように、法外な利息により苦しむ債務者は減少しております。
しかし、現在は、昔に比べ「借金をするハードル」が低くなっています。
学生でもカードが作れたり、ネットでの申し込みでクレジットカードを作れたり、リボ払いが浸透したりと、以前よりも借金をする経緯が増加しています。
特にリボ払いやネットショッピングの分割払い等は借金をしている感覚すらありません。
事実、非常に年齢が若い方や、主婦の方などのご依頼が増えています。
これが現在の債務者を取り巻く環境です。
以上で債務者と司法書士の歴史についてのお話を終わろうと思います。
債務整理手続きは恥ずかしいことではありません。是非、できる限り早いご相談をしてくださるようにお願いいたします。
債務整理と司法書士~司法書士は債務整理の専門家~②
前回に引き続き、司法書士が債務整理業務の専門家とされるまでの歴史をお話ししていこうと思います。
前回は、司法書士が団体として多重債務問題にあたるまでの流れを説明しましたが、今回はその続き、平成5年ごろからです。
平成5年ごろ、各消費者金融業者において、「無人契約機」が流行します。テレビでのコマーシャルも多く放映されるようになり、今でも記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
この無人契約機により、機械だけが設置された店舗へ行き、カードが即日発効され、即日融資が受けられるようになりました。
貸金業者はこれにより、人件費の削減はもちろん、債務者の借金への心理的ハードルを下げることに成功し、勢力を拡大していきました。
それと同時に、多重債務に陥る人の数もどんどん増えていったのです。
そして、司法書士業界としては、平成10年から、弁護士業界と協力し、全国各地で上限利率の引き下げ、業者による過度な貸し付け(過剰融資)の禁止を求める運動を行いました。
相談会を開き、署名活動を呼びかけ、被害者の会を作り、確実に社会への訴えかけをしていったのです。
これまでは、主に個人の債務者を救済するべく活動していた司法書士・弁護士ですが、平成11年ごろには「商工ローン問題」が社会的に知られるようになります。
商工ローンは、個人消費者への貸し付けをせず、自営業者や中小企業への貸し付けを主としています。
商工ローンの詳しい仕組みは割愛しますが、高い利率・過度な取り立てが原因で被害を受ける債務者が多い点はこれまでと同様でした。
司法書士・弁護士としては、この商工ローン問題に対しても対応をしていきました。全国各地での運動の成果もあり、上限利率の引き下げを行うことができ、一定の成果を上げます。
まだまだ上限利率は債務者を救うほど低くはならなかったものの、司法書士の運動が社会を変えた、その点において、確かな実績となりました。
しかし、まだまだ消費者金融の勢いは止まることなく、被害を受ける債務者は増えていきます。
またこのころになると、消費者金融からは既に借りられない状態になってしまう債務者も増えてきました。
そうなると出てくるのがいわゆる「闇金」です。とんでもない利率での貸し付けが違法に行われ、大きな社会問題となります。
平成15年にようやくヤミ金対策法が成立しますが、そもそもの原因は闇金ではありません。
消費者金融による過度な貸し付け・高い利息を解決する必要があったのです。
平成14年ごろ、司法書士の関与としては、破産・調停・個人再生等の手続き書面の作成を行っていました。
債務者を救済する法整備が整っていなかったこともあり、司法書士が相手をする債務者は「既に借金で首が回らない状態」の債務者でした。
一方、弁護士は「任意整理」という方法での債務者救済を行っており、これは破産等に至る前に対処できる方法です。
この当時、司法書士には裁判の代理権がなかったため、任意整理を行うことができず、業務内容に違いが起こっていました。
しかし、サラ金・商工ローン・闇金問題に対して、司法書士は弁護士と協力して解決にあたっていました。
その実績が認められる形で、平成14年、司法書士にとっては画期的な法改正がなされます。
それがいわゆる「簡裁代理権の取得」です。これにより司法書士は認定を受ければ裁判の代理権を取得することが可能となったのです。
この法改正により、司法書士は弁護士と同様に任意整理により債務者を救済することができるようになり、今日に至るのです。
本日は、司法書士が裁判代理権を取得するまでの流れをお話ししたところで終わりとします。
次回は、最終回、消費者を取り巻く環境がその後どう変わったかをご説明したいと思います。
債務整理と司法書士~司法書士は債務整理の専門家~①
債務整理手続きの具体的な流れについてはHP内に記載していますが、今回はそもそも司法書士がどのようにして債務整理業務と関わるようになったのかをお話ししていこうと思います。
これを読めば、どうして司法書士が弁護士と並び債務整理問題の専門家として認知されているかが分かるはずです。
そもそも、債務整理が必要となったのは、昭和30年代~40年代ごろ、サラリーマン金融(サラ金)が巷に浸透してきたのが始まりです。
その当時は貸金業法も整備されておらず、貸出利息は70%を超え、100%に近いものも多かったそうです。
現在、消費者金融の利率は15%前後が多いことを考えると、当時の利率が途方もなく高いことが分かると思います。
当然、これほどの利率になると、「返済するために借金をする」という自転車操業のような形になり、多重債務状態に陥る債務者が激増します。
しかし、このサラ金が社会問題として認知されたのは昭和50年代の終わりになってからです。
サラ金業者による過度な取り立てにより被害を受ける債務者がマスコミにより報道され、ようやくこの問題が社会に認知されたのです。
問題が認知されたことにより、旧貸金業法が制定され、このサラ金問題は一旦沈静化しました。
この当時、問題にあたっていた専門家はその多くが弁護士でした。
また、一部の司法書士はこの時点で裁判所類作成等の業務を通じ、債務者問題に取り組んでいました。
つまり司法書士は弁護士と同様、非常に早い時点で多重債務問題に取り組んでいたのです。
次に多重債務問題が顕在化したのは、平成2~3年ごろ。
しかし、これはあくまで「顕在化」した時期であり、問題は先ほど書いた昭和60年代から進行を続けていたのです。
旧貸金業法制定時には、「みなし弁済」という制度が盛り込まれており、これは一定の条件を満たせば、利息制限法を超えた利息が認められるという制度です。
この制度を悪用することにより、貸金業者は利息制限法を超えた高金利の利息を得ていたのです。
しかし、先ほどの段落で説明したように、昭和50~60年代のサラ金問題は一度沈静化しました。
問題は沈静化したが、進行していた。一見矛盾するようですが、そうではありません。
その理由は「バブル景気」です。社会全体が好景気であったため、この債務者問題が顕在化しなかったのです。
そしてバブルが終焉した平成2~3年で再び多重債務問題として社会が認知したのです。
この時期、司法書士は個人での取り組みの枠を超え、組織的に対応を始めました。
青年司法書士会等の司法書士団体が弁護士団体とも協力しながら、各地で相談会・交流集会を企画していったのです。
このように、専門家団体としても司法書士は非常に早い段階からこの問題にあたっていたのです。
今回は、平成2~3年までの多重債務問題の発生から、司法書士が専門家団体としてこの問題に取り組むまでの流れをお話ししました。
次回は、この先、貸金業者が最も力を持っていた平成10年ごろのお話からしていこうと思います。
新型コロナ渦における借金問題について
新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっており、感染防止のための医療・健康面での対策は各自治体を中心に広がりを見せています。
しかし、緊急事態宣言が延長されることも決まり、経済的な影響はむしろこれから大きくなっていくことが予想されます。
実際、当初の緊急事態宣言の終了日だった5月7日付にはNHKのニュースで、コロナが影響し、倒産となった会社が119社に上ったことが報道されています。
中小企業が影響を受けるのはもちろんですが、派遣切り、バイトの勤務減少などにより、既に個人の皆様にも経済的なダメージが及んでいることかと思います。
仕事が減り、収入が減少しても家賃の支払いは続き、カード会社への返済が止まることは今のところありません。(事業者への家賃補助政策については話し合われているそうですが・・・)また、頼みの綱の一人10万円の定額給付金についても支払われるのは5月下旬から6月以降になる自治体が多いようです。そもそも10万円をもらっても火に油を注ぐ状況に陥っている方も少なくないかもしれません。
そのような状況になってくると、国からの政策を待っているだけではなく、自ら借金の整理を行っていくことも考えなくてはなりません。例えば、この状況で司法書士に債務整理を依頼すれば、このようになることが予想されます。
司法書士に依頼し、債務整理に着手すれば、カード会社への支払いは一時ストップします。カード会社への支払いがストップしている間に、家賃、公共料金など絶対に支払わないといけないところへお金を回し、何とか生活の再建を図ることが可能となります。この間にコロナ渦が完全に収まることは難しいかもしれませんが、経済活動の制限には限界があり、少しずつ確実に経済活動は再開していくはずです。そして、バイトや派遣の動向を見ながら、債務整理の方針を決定していくという流れに今後の債務整理は進んでいくと思います。
コロナ渦における債務整理は、通常の債務整理と同様に、「放置する」という選択肢が一番危険です。完全に家計が破綻する前に是非ご相談ください。
当事務所は、コロナ対策として、十分な換気を行う、同日中に連続して他の依頼者との面談を行わない等の対策を取っております。また、どうしても直接の面談を行いたくないという方もご一報ください。
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