新規事業の補助金などの影響か、法人の設立が増えているのは以前お話しした通りです。
法人の中でも社会的な信用が高い形態としては、「株式会社」や「一般社団法人」などがあります。
これらの法人は、設立の登記申請の前に、公証人による定款の認証が求められているために、社会的な信用度が高くなっているのです。
この定款の認証には、まず「実質的支配者の調査」があります。
具体的には、会社の発起人などの出資者が暴力団関係者ではないことの審査となり、これを経ることにより、暴力団関係者が作った法人ではないことの証明となるのです。
しかし、この定款の認証制度、社会的な信用と引き換えに少し高い手数料がかかってしまいます。
正確な金額は、定款の文字数等にも関係してきますが、多くは5万数千円の手数料となります。
既に事業をしている個人の方が、法人に形態を変えたり、既に会社を持っている方が別事業部門として会社を設立する場合は、この程度の金額気にならないかも知れません。
ただ、多くの方は会社を設立することで事業を始めていくため、この手数料もバカにならないのです。
さて、この定款の認証ですが、現在は多くの場合、電子認証という形式がとられており、要はデータ上で定款を作成・認証しています。
実際に公証役場を訪れる必要はあるものの、それまでのやり取りも含めオンラインでの手続き進行が可能となっています。
ただ、今回のお話は、公証人が行っている業務の中で大きなウエイトを占める「公正証書」に関するニュースでした。
この公正証書、だんだんと社会的にも認知されてきたように思いますが、主に使われるのは「公正証書遺言」の場面です。
公正証書で遺言を作成することにより、紛失の可能性が減ったり、家庭裁判所での検認が必要なくなったり、本人以外の人が遺言書を偽造することができなかったりと多くのメリットがあります。
しかし、この公正証書は全文を自筆する必要こそないものの、公証役場に赴き、実印及び印鑑証明書を用いて本人確認、署名、押印が必須とされています。
遺言という重要な文書を作成する以上、仕方がないのかも知れませんが、永遠に残っていく形式とも思えません。
今回のニュースを目にした時は正直、「まだ早いかな」と感じました。
まだまだ無駄な押印、署名が世の中には多くあります。
それらが淘汰された後、遺言・登記などの重要な手続きを検討するという方針でもいいのかなと司法書士としては思ってしまいました。
ただ、こういった話が出てくること自体は素晴らしいことです。
パブリックコメント等にも注意を払いながら、また最新の情報を手に入れましたら、ここでお話ししていこうと思います。