被相続人の財産には実際に物として目に見える宝石や貴金属から目に見えない借地権等の権利まで様々なものが含まれます。しかし、その中でも価値の高さから考えても代表的な財産は不動産と預貯金関係の財産です。そこでまずは、被相続人が持っていた不動産を明らかにする流れを説明していこうと思います。
・不動産
不動産が相続財産の中でも相続人の皆様からの関心が高いものであり、「亡くなったおじいちゃんが不動産を持っていた。」という事実は相続人の聞き取りからすぐに判明します。
しかし、具体的に不動産の特定までできる方は少ないのではないでしょうか。不動産の特定には所在及び土地であれば地番、建物であれば家屋番号が最低限必要です。「おじいちゃんの不動産は住んでいた土地と建物だけなので、それぐらいはすぐに答えられます!」という方も中にはおられるかもしれませんが、住所地と地番が同じとは限りません。
実際、兵庫県では違うことがほとんどです。ではどうすればいいのかというと、いくつかの方法があります。
まず、第一の方法として、被相続人の権利証が手元にある場合、そこに情報が書かれており、そこから判明します。しかし、古い権利証は紛失していることも多く、この方法が使えない方も多いかと思います。
第二の方法は、毎年、市区町村から送られてくる固定資産税の納税通知書を用いる方法です。この納税通知書は毎年1月1日時点の所有権の登記名義人に対して送られるものであり、被相続人が不動産を取得していた場合の手掛かりとなります。(多くの場合4~5月に送られてくるはずです。)しかし、この納税通知書には被相続人の所有するすべての不動産が示されているわけではありません。以下の場合が納税通知書から不動産が漏れてしまうパターンです。
- 1月1日以降に不動産を取得した場合
- 非課税・免税点以下の不動産(土地については20万円以下、建物については20万円のものや、公衆用道路として使用されている土地等々)
- 被相続人が共有者の一人になっているだけの不動産
こういったパターンでは不動産が漏れてしまいます。ご自身でなさる方は他の調査方法も用いてください。
第三の方法は、名寄帳を取得する方法です。これも前のパターンと同じく市区町村から得られる情報ですが、これは相続人側から能動的に証明書を取得する方法です。相続人は被相続人の死亡と相続人の関係を戸籍等で示せば取得することができます。この証明書は、納税通知書で漏れてしまう、非課税・免税点以下不動産と共有不動産については漏れなく取得することができます。(一部の市区町村では非課税不動産が表示されないようです)
一見デメリットはないですが、こちらから能動的に動かないといけないため、被相続人の取得していた不動産が皆目見当つかない場合は、どの市区町村に請求すればいいかわからず、使えないです。つまりどれも単体では完璧な調査方法ではありません。
しかし、この3つのパターンを組み合わせていけばある程度不動産については漏れが少ないと思います。その他、当職が業務にあたる場合は、相続人の方からの聞き取りはもちろん、公図等から登記に現れない権利関係がないのか等より漏れが少ないように調査を行っていきます。
・預貯金関係
続いて、不動産と並び相続人の皆様からの関心が高い財産は、預貯金関係です。これは、銀行の通帳やキャッシュカードがあればスムーズに財産額の調査が行えるかと思います。
しかし、これも手掛かりとなる通帳などがなかった場合はどのようにすればいいのでしょうか。
一部の信用金庫等を除く一般的な銀行の場合、各銀行のいずれかの支店において口座名義人の氏名及び生年月日により預貯金契約の存否を調べることができ、これが最初のとりかかりとなります。(その際、不動産の名寄帳取得と同じように、被相続人と請求者の戸籍が求められるのに加え、印鑑証明書、請求者の免許証等々の書類の提出が求められます。)
そして、取引のあった銀行が判明すれば、合わせて残高証明の取得請求を行います。この手続きは窓口での対応をしてくれる金融機関もあれば郵送での扱いしかしていないところもあり、手数料も各金融機関によりまちまちです。この方法により一つの銀行にたどり着けば、あとはその周辺に財産が隠れていないかを探していきます。どうゆうことかというと、残高証明と合わせて取引履歴の開示請求を行います。実はこれがかなり大切なことであり、遺産承継業務を漏れなく行う上でのポイントです。
被相続人が主として使っていた口座の取引履歴には多くの情報が残されています。
例えば、固定資産税の引き落としがある、株式の配当金が入っている、死亡直前に多額の預金が引き出されている等々。
こういった情報が得られることがあります。言うまでもなく、固定資産税の引き落としがあれば不動産が発見できる。株式の配当金が見つかれば知らなかった株式が発見できる。また反対に多額の預金の引き出しがあれば、誰かへの生前贈与があったのかもしれない、もしくは現金としてタンスに眠っているかもしれない。など、本来もっとあったはずの預金を探すきっかけになる可能性があります。
こういったことが預貯金関係の財産調査の大まかな流れとなります。単なる残高証明の取得に留まらず、取引履歴等から財産を漏れなく調査していくことが大切となります。