・不動産の名義変更(相続登記)はしなければいけないの?
「不動産を持っている人が亡くなれば、相続登記が必要である。」
このことは世間にもかなり認知されてきたように思います。しかし実際のところは、相続登記の手続きが面倒だったり、そもそも被相続人が不動産を持っているのを知らなかったり、様々な理由から相続登記がなされていない不動産が多くあります。現在の民法においては相続登記が義務ではないため、放置しておいても罰則等はありませんが、時間が経てば経つほど相続登記は困難になります。
理由は相続関係説明図の項目で説明したように、代襲相続・数次相続が発生することにより相続関係が複雑になってしまい、相続人の足並みが揃いづらくなるためです。「それでも罰則もないんだし、そのまま放置すればいいじゃん。」とお思いの方もいらっしゃるかと思います。
ただ、相続登記をしなくても、不動産にかかる固定資産税の納税義務は相続人に引き継がれます。また、管理を怠ったことにより何かしらの事故等が起こってしまえば、損害賠償債務を背負う可能性もあります。
そういったことを回避するために、第一に思いつくのが、売却ですが、売却により買主に所有権を移転する前には必ず相続登記が必要となります。この段階になって初めて重い腰を上げ、相続登記をしようと思い立つも、相続人の数が多数になってしまい、手続きが進められない。こういった状況に陥る可能性があるため、法務局を中心とした行政は早期の相続登記を進めているのです。
・相続登記の添付書類、考え方
それでは実際に相続登記の進め方をご説明していこうともいます。不動産登記法上、相続登記の添付書類には、このようなものがあります。
- 登記原因証明情報
- 住所証明情報
- 代理権限証明情報(司法書士に依頼する場合)
以上の書類を揃え、申請書を作り、登録免許税分の収入印紙を貼り、管轄の法務局へ提出すれば相続登記を行うことができます。添付書類の2と3については簡単です。住所証明情報とは相続する人の住民票のことです。不動産登記法では、登記簿上の住所氏名が真正であることを担保するため、不動産の取得者が住民票を提供することを求めています。添付書類の3は委任状のことです。相続登記を専門家である司法書士に委任したことを証明します。
分かりにくい添付書類は1の「登記原因証明情報」です。
不動産登記の役割は、「不動産の表示と権利関係の公示」です。つまり、誰から見ても権利関係の動きが分からなければいけません。それにより、不動産の所有者が変わった場合、変更した「理由」も示すことが求められます。そして、それを書類上示す証拠となるのが「登記原因証明情報」ということです。
相続登記の場合は、相続により前の所有者から新しい所有者へ所有権が移ったことを書類上証明すればいいのです。具体的に言えば、戸籍謄本関係において被相続人の法定相続人が誰なのかを証明し、遺産分割協議書(及び相続人全員の印鑑証明書)若しくは遺言書により、その中の誰が不動産を取得することに決まったのかを証明すればOKです。
そしてこれは預金・株式の相続手続きと基本的には何も変わることがありません。1点だけ違いがあり、それは、金融機関は被相続人を「氏名・生年月日」で特定し、法務局は「住所・氏名」で特定しているという点です。この違いにより、相続登記では本来の戸籍謄本関係に加え、被相続人の住所に関する証明書の添付も求められます。登記簿上の被相続人の住所と、被相続人の最後の住所が一致すればいいのですが、一致しなかった場合、若しくはそもそも被相続人の最後の住所を示す証明書が取得できなかった場合(住所証明書は閉鎖された後、5年で廃棄される可能性があります)、その代わりとして、権利証や納税通知書等の追加資料を求められる可能性があります。
相続登記の添付書類としては以上ですが、実際の申請には登録免許税がかかります。税率は、対象不動産の価格に0.4をかけたものです。(基本はこれだけですが、登記簿上の地積と現況がズレている、一部非課税の道路部分が含まれている等変則的なものも多いので、ここは管轄の法務局に聞いてみましょう)この額を収入印紙で納めます。さらにその価格が正しいことを示すため、評価証明書または最新の納税通知書の写しを添付する必要があります。
以上が相続登記の基本的な考え方、および添付書類の説明となります。当職が業務を行う場合は、煩雑な書類の収集~遺産分割協議書等各種書類の作成、法務局への申請まで全てを行います。また、相続人が多数になってしまい何から手を付けていいか分からない、被相続人が外国籍で戸籍がない等、変則的な手続きについてもご対応いたします。