成年後見をしている司法書士として見逃せないニュースを見つけたので本日はそのニュースを共有したいと思います。
もし今施設に入所中の親族がいるという方は、このニュースを見て、もう一度成年後見についても考えてみてください。
今回の事件があったのは、神戸ではなく、福岡市でした。
犯人はなんと有料老人ホームの元施設長です。
窃盗というと、空き巣的な犯行かと思われたかもしれませんが、そうではありませんでした。
老人ホームに入所中の方が預けていた預金通帳から不正に出金し着服したというもの。横領に近いものですね。
正直、老人ホーム側にこれをやられてしまうと防ぎようがありません。
老人ホームに入所中の方は、特にこの時期なので外出が制限されています。
ただ、日常の嗜好品であったり備品類は補充が必要です。
それらにために使うごとに毎回ATMへ・・・
となるとどうしても負担が大きくなります。
かといってホームの部屋に大金を置いておくのも不安です。
そうなるとやはり、施設やヘルパーさんにお金を預けるのが安全面でも利便性の面でもメリットが大きいと考えるようです。
ただ、施設であれヘルパーさんであれ、人の預金・現金を預かる権限はありません。
施設契約にもヘルパーさんとの契約にも、それらの権限は含まれていないからです。
なので、施設にお金を預けることはできないというのが基本的な考え方であり、実際高額な金銭・預金通帳・カード類は預かってくれない施設が増えています。
かといって、日常の金銭管理が面倒な状況は変化ありません。
そうなると、親族あるいは成年後見人が登場します。
毎月必要な額を、お小遣いとして差し入れたりすることによって安全面を担保しつつ利便性を上げることができます。
また、不正な出金がないかも裁判所が監査することになるので、総合的な安全面を上げることも可能です。
日常の金銭管理に不都合がある、施設が対応してくれないという方は是非成年後見制度のご利用を考えてみてください。
最後に、今回の事件が「業務上横領」にならなかったことについて。
私たち司法書士が成年後見人として、金銭を横領すると十中八九「業務上横領」になります。
これは成年後見人が、金銭管理をする権限があることに由来します。
管理権限のあるものが横領して初めて業務上横領なのです。
そうなると今回の施設長はやはり、権限がないという扱いなのでしょう。
大事な財産はしっかりと権限のある人に預けましょう。