相続登記が義務化になることが決定しましたが、法改正には「パブリックコメント」というものがされることがあります。
パブリックコメントとは、公的な機関が規則等を制定しようとする場合に、広く公に、意見などを求める手続きのことを言います。
今回の相続登記の義務化に対しても、賛成意見や反対意見が挙げられていました。
賛成意見としては、
・不動産登記制度の信頼を確保し、所有者不明土地問題の解消・発生抑制ができる。
・固定資産税の納税義務者を明らかにすることで、未納の税金の発生を防ぐことができる。
・土地所有者は公法上の義務として登記を真正にすることが求められる。
等々、こういった意見が賛成意見として挙げられていました。
賛成意見については、目新しいものは少なく、多くは現在問題になっている「所有者不明土地問題」の解消に寄与するという意見が目立ちました。
一方、反対意見には、
・不動産の権利に関する登記申請は、私的自治の原則に委ねられており、それを義務化する必要はない。
・国家が相続登記を義務化することにより、登記簿には半強制的に相続人の住所・氏名が記載されることになり、プライバシー侵害にあたる。
・相続が複数回起こっているが、不動産価値としては低い場合には、相続人に多大な負担を与えることになる。
・相続登記を義務化することで、共有状態など、後に紛争化する可能性が高い状態での登記が増えてしまう。
こういった意見が挙げられていました。
私も司法書士として、今回の法改正を考えていましたが、マイナス面としては「費用面」ぐらいしか正直浮かんでいませんでした。
ただ、今回のパブリックコメントを見て、プライバシー侵害であったり、共有状態での登記が増加することは確かに大きな問題点だと感じました。
現在、登記のプライバシー侵害については段々と意識されることになっています。
例えばDV問題で、住所の記載を登記簿ですることにより、相手方から住所を特定されることになります。
解決策として、現住所以外での登記申請が可能になったりと、少しずつですが、対策がされてきています。
今回の法改正で、相続登記だけではなく、住所等の変更も義務化されることになれば住所が公示されることへの抵抗感はより強まるでしょう。
住所等の変更を公示されないようにする方式などは今後登場してくるかもしれませんね。
他にも、共有状態での登記が増えていけば、共有物分割請求などの訴訟が増加することも予想できます。
登記名義を一度手にしてしまったがためにより紛争が泥沼化することも想定されるので、この辺りは司法書士としてアドバイスしていかないとなと感じました。
さて、法改正は司法書士として勉強すべきところですが、こういったパブリックコメントにも目を通すことで後々の問題点にもいち早く対応できるので、今後も意識していこうと思います。