司法書士事務所は、相続に関する業務を受任することが多いのですが、単純な相続登記~株式の承継を含むような複雑なものまで内容は様々です。
今回はその中でも、会社の代表者が亡くなった場合の相続手続きについてお話をしようと思います。
会社の代表者が亡くなった場合、会社の代表者を変更しなければなりません。
通常、大きな会社でなければ、代表者=大株主であることが多いため、この株式の動きが重要になってきます。
例えば、代表者が亡くなり、当時から取締役となっていた長男が事業を引き継ぎたいとしましょう。
相続人としては、その他に役員となっている兄弟が3名、代表者の配偶者が存命であり、当所の株式は全て亡くなった代表者が所有していたパターンを想像してみましょう。
長男が代表者となり、事業を承継していこうとした場合、当然ですが相続人全員の承諾があれば何の問題もなく手続きを進めることができます。
しかし、仮に、長男以外の相続人の足並みが揃わなかったとしたらどうでしょう。
役員の決定や、そもそも会社を継続するかどうかは原則「株主」が決定します。
会社の役員ではありません。
つまり、代表者が持っていた株式がどこに流れるかによって意思決定者が変わるのです。
さて、上記の例のパターンでは、遺言などがない場合、2分の1を配偶者が。残りの半分を兄弟4名つまり各8分の1ずつ兄弟が持つことになります。
よって、兄弟全員が自らを代表者にしたい場合は、株式の議決権が割れてしまい、結果として配偶者の意見に左右されることになってしまうのです。
最悪の場合は、配偶者がどの兄弟に会社を続けてもらいたいかが決められず、会社がストップしてしまうことも十分あり得るのです。
では、この場合、どうすれば良かったのでしょうか。
ベストな手段としては、代表者が存命の間から遺言などで株式の流れに差をつけておくことが考えられます。
これにより、会社を引き継ぐ相続人に株式・議決権を集約させることができます。
特に相続人が日本各所、場合によっては海外に分散しているような相続状況であれば遺言書の作成は必須と言えるでしょう。
その他には、さらに一歩進んで、事業承継をあらかじめ行っておくことも考えられます。
具体的な内容は避けますが、事業承継税制であったり、種類株式、家族信託等を用いながら総合的に事業承継を行う選択肢もあります。
ただこれは、司法書士・税理士などの色々な専門家の力を借りる手続きであり、費用も時間もかかります。(当然効果は非常に高いですが。)
そのために、まずは最低限、遺言を用いて株式・議決権の分散を避けるところから始めることをおすすめします。
当事務所では、こういった会社法人の代表者様向けの生前財産対策も行っております。
興味がある方は一度ご連絡ください。