・相続状況の聞き取り
遺産承継業務は、相続人の調査から手続きが始まっていきます。
当事務所では、まず依頼者からの聞き取りを丁寧に行います。簡単な相続関係の聞き取りから、遺言の有無、養子縁組の有無、相続人の中に行方不明者がいないか、今回の手続きに反対している方がいないか等細かく聞き取っていきます。
基本的には戸籍謄本を収集していけば自然と明らかになることなので、依頼者からの聞き取りをそこそこに、すぐに手続きに入る先生がおられます。しかし、最初の聞き取りを丁寧にしておかないと、思わぬ勘違いやミスが起こってしまうこともあります。
よくある例としては、相続人の一人が相続放棄をしたと本人を含めて全員が思い込んでいるだけのケース。相続放棄は家庭裁判所にて適切な手続きをしなければ法的な効果はありません。
しかし、疎遠となっている相続人が「自分は相続放棄をする」とだけ言い残し、以降親族との連絡が全く取れない。こういったケースはよくあります。この場合、聞き取りをしっかりせず手続きを始めてしまうと、戸籍が集まった段階で初めて気づくということになってしまいます。こうなってしまうと、手続きが遅くなるだけならまだしも、相続人の捜索ができず、最悪は別手続きへの移行となってしまい、せっかく専門家に手続きを依頼したのに全く予想外の展開になってしまいます。
専門家である司法書士にお任せいただく以上、しっかりとした聞き取りの上、できる限り不測の事態が起こらぬように説明・報告し、業務を遂行していきます。
・戸籍謄本の収集代行について
依頼者からの聞き取りの後は、戸籍謄本等の書類を収集していきます。司法書士の他、行政書士・弁護士など俗に「士業」と呼ばれる専門家は業務を遂行するために「職務上請求」を行うことができます。これにより、当職は遺産承継業務の受任をすれば、面倒な戸籍等の収集を代行で行うことができます。当事務所では、遺産承継の報酬に取得代行の手数料を含んでおり、追加でかかることはありません。(役所への交付手数料・郵送料等実費はいただきます)
具体的に収集する手順・方法を説明します。この部分は依頼なさらず、自分で相続手続きをなさる方にも参考になるかと思いますので、ぜひご覧になってください。それでは、まずどこへ何を請求するかというと、相続人の本籍地がわかっている場合、管轄する市町村へ、戸籍・改製原戸籍・除籍謄本を請求します。普段馴染みのない書類がさっそく出てきましたが、改製原戸籍とは、簡単に「縦書きの戸籍」程度に思っていただいて結構です。つまり今の横書きに移行する前の情報が書かれています。続いて除籍謄本、こちらは「戸籍の抜け殻」とでもいうものです。戸籍の中の人が全員出て行った場合、除籍謄本という扱いになります。
私たち専門家は、それぞれの戸籍がどのような流れで改製されていったかを知る必要がありますが、手続きされる皆様にとっては正直あまり必要な知識ではありません。というのも、今の役所はかなり親切です。例えば、役所へ行き、「母の相続手続きのために出生から死亡までの戸籍が要ると言われました。」こう伝えるだけで記入する用紙を教えてくださり、次はどの役所へ行けばいいかまで教えてくださいます。「それなら、司法書士に頼まなくていいじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、実は単純な相続であればそれも間違いではありません。ただ、少し複雑になってくるのはここからです。
被相続人の出生から死亡までの戸籍等を取得すれば、その次に必要なものは、ずばり「相続人の現在戸籍」となります。言葉にすれば簡単ですが、それほど単純ではありません。なぜかというと、個人の方が収集できる戸籍謄本には制限あるいは条件があるからです。
個人が「無条件に」取得できる戸籍は
- 自分自身のもの
- 配偶者のもの
- 直系尊属(両親・祖父母等)
- 直系卑属(子・孫等)
に限られます。つまり、「結婚して両親の戸籍から抜けた兄弟」の戸籍は入っていません。結婚した兄弟の戸籍を取得するには条件があるのです。
その条件は、
- 委任状をもらう
- 戸籍を取得するにあたり正当な理由がある
このどちらかです。1はシンプルですが、遠方に兄弟が散らばっている場合、かなりの労力がかかります。また、2の条件は「遺産承継の手続きのため必要」ならばOKですが、それを証明する必要があります。
具体的には、被相続人が死亡し、自分が共同相続人であることを示さないといけません。つまり請求をおこなう役所ごとにこれまで取得した戸籍等のコピーを添付して見せて回らないといけないのです。このあたりが手続き上のつらさになってきます。また、法的判断が必要になるのも専門家に任せた方がいい理由になります。
養子がいる場合、相続放棄がある、排除・欠格事由に該当するものがいる場合、戸籍の一部が廃棄されている場合、遺言が見つかった、戸籍の収集中に相続人の一人が亡くなった等々、イレギュラーな事案の場合、役所も助けてくれないことがあります。こういった場合は、専門家に頼むメリットが大きいかと思います。また、当事務所では後の手続きに移る前、相続人が確定した段階で一度報告書を作成し、ご説明いたします。
さて、おまけとして、被相続人の本籍地がわからない場合ですが、自分の情報から追いかける方法もあります。流れはこうなります。
- 自分の住民票を本籍地記載で取得→
- 自分の戸籍謄本を取得→
- 「婚姻により、○○県○○市○○番地より入籍」の記載を見つける。
この3番が両親の本籍地となっているはずです。この3の部分が「○○より転籍になっていれば、両親の戸籍にたどり着く前にもう一つ違う本籍地が挟まっているので、その市町村にも請求してみましょう。また、結婚をしていない場合は、1の本籍地が両親の本籍地となっているはずですので、該当市区町村へ戸籍謄本を請求してください。